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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4993・94号】寄場からの声に聞く
新型コロナウイルス感染拡大の渦中で(2面)

2023年3月25日

コロナ禍での支援活動

野宿者を支援する会 《笹島》

 私は愛知県名古屋市で炊き出し・野宿者支援活動を行っているささしま共生会という民間の支援団体の一員です。この支援団体の炊き出しの歴史は長く45年以上になります。
 私はこの支援団体の中で一軒の木造二階建て古いアパート「三ツ木荘=ミツキソウ・12部屋」の管理を任されています。三ツ木荘に入居を希望される野宿の方の入居のお手伝いを行い、生活保護申請等の手続き、生活支援、その後の一般的な民間アパートへの転居などの支援を行うことが私の本来業務です。
 ところがコロナ禍になり入居者が転居することがほとんどできない状況になってしまいました。その理由は、役所の転宅のための調査である部屋への訪問をコロナが猛威を振るう状況ではできないからということでした。それまでは入居後1年で役所の了解が得られれば古い三ツ木荘よりずっと条件の良い住居に転居することが出来ましたが(入居・転居の費用が生活保護費の範囲内で出る)、転居する人がいないために私は新しく入居者を探すことがほとんど無くなってしまいました。しかしその分炊き出しの活動が忙しくなってきました。ささしま共生会の炊き出しは名古屋市の中心部で月・木の毎週2回夜に行われここのところの利用者数の平均は120人程度です。
 コロナ禍に入ってから利用者数は実は少し減っています。人が多く集まる炊き出し会場を恐れ利用しなくなった高齢の方々がいます。そして顔ぶれは少しずつ変わり利用者の年齢が若くなってきている感じがします。野宿ではないが一食に事欠く人が増え、また新たに野宿に追い込まれた人たちも炊き出しの列に並んでいます。
 路上に投げ出され困窮する人たちに対して私たちは小さな支援しかできません。炊き出しは食事ができていない人に提供するその時その時のたった一食の緊急的な支援にすぎません。翌日にはまたお腹が減って困窮してしまいます。ですから困っている人を公的な支援(生活保護など)に繋ぐのが私たちのまた一方の大切な働きです。そして炊き出しの場は当事者の方が安心して相談ができるように私たちが食事以上のものを提供する場でもあると感じています。

(林 正史報/ささしま共生会職員・教団教師)


町の隣人とともに

第49次寿越冬闘争《寿》

 寿地区で1974年から始まった皆で冬を越える寿越冬闘争も第49次になりました。住民自治からはじまり時代とともに担う人々も移り変わっていったが、「ともに生きる」、「厳しい冬(困難)を生きて越える」という考えは変わらず営まれています。
 新型コロナ感染症が世に広がり3年。今回の第49次はちょうど感染者数のピークにあたり、感染症対策や支えるボランティアが集まらない懸念がありました。そのため、本部テントを1基分省き、医療班が新型コロナの抗原検査ができるように別途簡易テントを増設しました。準備・撤収を含め20日間の期間中累計で960人の参加者によって支えられ無事終えることができました。
 ボランティアだけでなく、全国から献品・献金が送られ「寿地区」とその活動にお心を寄せて頂いたことがひとつの形になり感謝いたします。人ひとりでは叶わないことが、多くの「ひと」の「想い」よって大きな力になる出来事は、単純に「ひと」の力だけでないものを現場で感じています。
 今回の寿越冬の炊き出しが新聞記事に掲載され見出しに「物価高の中 連日500人列」とありました。寿地区は労働市場として発展し住人の高齢化を経て「福祉」の町へと変わり、その後は多様な困難を抱える背景により他の地域から行政によって寄せられてきた経緯があるので、物価が下がればまた景気さえ良くなれば今の状況が解消されるわけではありません。高齢化と複合的な困難という社会の問題が顕在化しているのです。
 大がかりな仮設テントや毎日500食以上作るための準備には人手がかかります。高齢化は住人だけでなく活動の中心を担う人へも等しくのしかかり、また、関内を中心とした都市再開発の波がやってきています。担い手が減り続ける中、新しい問題と価値観を含む時代の変化に対応してゆかなければなりません。コロナ禍によって分断される「ひと」と「ひと」の「結びつき」、知恵の「結びつき」を再び編み、垣根のない「隣人」として歩み求めていきたいです。

(汀なるみ報/寿地区センター主事)


ダイバーシティ(一人一人の多様な生き方が尊重される)社会の真の実現を目指して

 あいりん総合センター 《釜ヶ崎》

 2019年4月22日、大阪府は、釜ヶ崎のあいりん総合センター(以下、センターと略す)周辺で野宿生活を続けている労働者を追い出すために裁判(センター追い出し訴訟)を起こしたのですが、この裁判に対する判決が、2022年12月14日、大阪高裁(太田晃詳裁判長)で言い渡されました。大阪高裁の判決内容も、2021年12月2日に、大阪地裁(横田典子裁判長)が出した判決内容と同様に、22名の労働者に立ち退きを命じるものでしたが、大阪府側が求めていた仮執行宣言(強制排除)は、地裁判決と同様に認めませんでした。この判決の結果、当面の間は、センター周辺では、常時20名から30名ほどの労働者が、センター周辺から追い出されることなく野宿生活を続けることが出来るようになったわけです。
 大阪高裁の判決当日には、「今度こそ、裁判所は強制排除は認めるだろう」ということで、大阪府の職員等が大挙して傍聴に来ていましたが、結局、大阪高裁の判決でも、裁判所は強制排除は認めなかったのです。大阪府の起こしたセンター追い出し訴訟の野宿者側の弁護士の一人である、遠藤比呂通弁護士は、大阪高裁での判決が言い渡される直前に、「裁判所は、ホームレス状態にある人たちの占有の正当性は認めていません。しかし、彼らの事情を考慮し、排除の流れに乗らなかった。このような決定を下したのは初めてなんですよ」というコメントを残しています。
 「強制排除を認めない」という画期的な判断を下したのは裁判官ですが、私はそこに「強制排除という不正義な行為を許さない」という神様の意思が働いたからこそ、裁判官は「強制排除を認めない」という判断を下したのだと改めて思っています。
 野宿者側が上告したため、センター追い出し訴訟は最高裁の場で争われることになりましたが、今、釜ヶ崎では2年以上に渡って、センターの強制閉鎖と強制排除に反対する集会とデモが毎月1回続けられていて、私もこの集会とデモには毎回参加していますが、最高裁でも強制排除を認めない判断が下されるよう、引き続きこの集会とデモに参加して声を上げていきたいと思っています。

(大谷隆夫報/釜ヶ崎医療連絡会議代表・関西労働者伝道委員会専任者・教務教師)

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