「二次被害」を生み出すな
神奈川教区議長
古谷正仁
昨年12月23日、S国際大学病院の患者であったAさんが、スピリチュアルケアを担当するチャプレン(日本基督教団無任所教師)より、性暴力を受けたとして訴えていた裁判で、東京地裁は被告となった牧師と病院側に110万円の支払いを命じる判決を下し、その後両者共控訴せず、この判決は確定した。
Aさんは被告牧師が神奈川教区内に居住していることから当教区にハラスメントの申立をされた。それは受理され現在、当教区による調査が進められている。
その調査の中でAさんが訴えられていることの一つに、深刻な「二次被害」がある。当該牧師が不起訴になった頃から、牧師を支援する団体が活発に活動し、Aさんからすると耐え難い表現の文書が様々に配布された。当該牧師を支援したいとの願いから生まれた活動であったが、確定した判決でも当該牧師の不法行為が認定されたことから考えても、もっと慎重にされるべきであったし、Aさんを深く傷つけたことを含め、その責任は重大である。
ハラスメント事例においては、申し立てられた側が過剰に反応し、それに共感・同調した支援活動が、結果として被害を受けた方々に「二次被害」として、二重三重の苦しみを与えることが多い。これを防ぐには、私たちの教団・教区において、ハラスメント担当窓口を整備、強化すると共に、この教団に連なる一人一人がこの「二次被害」について理解し、加担しないよう対応することが必要である。
私たちが「二次被害」を生み出す当事者にならないためにも、調査を冷静に見つめ、協力する態度を養うことの大切さを強調したい。この活動は、調査への妨げになることも少なくないことも付言しておきたい。
(神奈川教区議長)