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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4968号】寄せ場からの声に聞く
新型コロナウイルス感染拡大の渦中で(2-3面)

2022年3月5日

人と関わる

あいりん総合センター 《釜ヶ崎》

 2019年4月22日に、釜ヶ崎のあいりん総合センター(以下、センターと略す)周辺で野宿生活を続けている労働者を追い出すために大阪府が起こした裁判に対し、2021年12月2日、大阪地裁(横田典子裁判長)は、大阪府の主張を認め22名の労働者に立ち退きを命じる判決を言い渡しました。しかしながら大阪府が同時に求めていた仮執行(強制排除)は、裁判所は認めませんでした。この裁判は、引き続いて控訴審で争われることになりましたが、一審判決で裁判所が強制排除を認めなかったため、少なくとも、控訴審の判決が出るまで、大阪府は、新センター建設に向けてのセンター取り壊し工事に入ることが出来なくなっています。

 私が、この4年程の間、継続して関わっているアルコール依存症の労働者Sさんという方が居られます。私が関わる以前の10年間程は、入退院の繰り返しで、退院してからも殆ど、酒浸りの毎日だったそうです。そういった生活の中で、大阪自彊館愛隣寮(アルコール依存症の人たちの支援施設)に居た1年程の間は、飲酒せずにいられたそうです。その大阪自彊館愛隣寮も、釜ヶ崎再開発の流れの中で、今は取り壊され、ホテルとファミリーマートに成り代わっています。

 2022年4月22日から、星野リゾートが運営する高級ホテルがセンターのすぐ近くにオープンすることになりました。新センター建設に向けての動きと高級ホテルがオープンすることになった動き、そして先に述べた、大阪自彊館愛隣寮がホテルとコンビニエンスストアに成り代わった動きの根底にあるのは、「お金もうけ」という発想です。

 イエスがその宣教活動の中で貫いたのは、何かの建物を作ることではなく、イエスが生きていた当時、差別と偏見の中で苦しんでいたあらゆる人たちの尊厳を回復するために、そういった人たちと徹底的に関わるということでした。釜ヶ崎で、今も、そしてこれからも必要とされていることは、釜ヶ崎日雇労働者一人一人と徹底的に関わって行くこと、「人と関わる」ことだと改めて思わされている、今日この頃です。

(大谷隆夫報/釜ヶ崎医療連絡会議代表・関西労働者伝道委員会専任者・教務教師)

ホテルとコンビニエンスストアが建てられた大阪自彊館があった場所の最近の様子
※写真 教団新報より

 


誰をも排除しない社会

第48次寿越冬闘争《寿》

 寿町は横浜市の中心地にほど近く、年越しの人気スポットであるみなとみらい地区から徒歩圏内です。オリンピック・パラリンピックの際には、会場となった横浜スタジアム周辺を居場所とされている方々の大掛かりな移動が強制されました。そのような町で第48次寿越冬闘争(以下、越冬)は、コロナ禍の中で昨年に続き縮小した形で12月29日から1月4日にわたり行われました。中止という選択肢はありえません。役所の窓口が閉まる中、相談できるのが横浜市内では寿越冬の場所しかないからです。

 越冬の1週間のスケジュールは、炊き出し・パトロール、法律・労働・生活相談などです。毎日1回午後に配食をする炊き出しは、400〜740食あまりと日によって幅があり、合計は2646食でした。パトロールは、横浜駅・関内駅・桜木町駅・鶴見駅・三ツ沢公園などで年を越しておられる計約60名を、安否確認などをしながらお訪ねしました。29日から1月3日までの法律相談は24件、労働相談は8件、医療相談は205件、生活相談は51件、4日は生活保護の集団申請です。役所の閉庁期間には、横浜市が寿の簡易宿泊所等を合計60床借り上げて、宿泊希望者に対応できるようにしました。他の支援現場ではコロナ以前に比べ女性の相談者が増えたと聞きますが、寿では例年通りでした。

 コロナウイルス感染症の広がり方が予測できない状況下での越冬闘争でした。例年は寿地区の冬まつり(年越しそば、餅つき、カラオケ大会、囲碁将棋大会など)の行事が行われてきましたが、2年連続で中止となりました。感染予防のために越冬の本部テント内に集まることなども控えていただくことになりました。冬まつりがないこと、また団らんの場を提供できないことは、「いのち」を守ることは人との関係性をつなぐことでもある、という思いから離れ、ジレンマの日々でした。しばらく続くであろうコロナ下で、必要な距離を保ちつつ、ともに生きるつながりを確かめ合いながら歩みたいと願っています。命をめぐる闘いは引き続いていきます。誰をも排除しない社会を求めながらに、です。

(原 宝報/寿地区活動委員会委員長・上大岡教会牧師)

越冬炊き出し
※写真 教団新報より


困っていたら「助けて」と言える社会を目指して

野宿者を支援する会 《笹島》

 「野宿者を支援する会」とは、2016年に設立した有志団体で、野宿者の昼巡回を中心に活動していて、現在もささしま共生会(私は元職員)と協力団体です。

 名古屋市内の野宿者数は2021年1月の時点では98名と行政は発表しています。しかし、私たちの団体の昼回りでは120名を超えた人に出会いますし、まだ出会っていない人もいますので実際には98名どころではないと推定します。野宿している人はほとんどがアルミ缶回収を収入源にしています。深夜から何キロも自転車で走り10〜20㎏のアルミ缶を集め一日1000〜2000円の生活をしています。

 2020年、コロナ禍になりアルミ缶の単価が下がり始めました。野宿をしながら現金仕事やアルバイトをしていた人たちは真っ先に解雇されました。炊き出しに並ぶ人も増えましたが、野宿者が増えたのではなく、職を失って食物が無くなったアパートの人たちが増えました。毎回、若い人に「何か困っていませんか」と声をかけても「いえ、別にいいです」と返されるだけです。ある日、野宿し始めたという若者が自分のことを話してくれました。「普通にサラリーマンをしていたが、転職をしてしばらくしたら、内定が取り消されて、お金が無くなりアパートを出ました。実家?そんなところに帰るなら野宿した方がましっす」と苦笑いされるので、その若者の支援をし始めました。

 野宿者におけるコロナの問題は家庭の不和、やる気すら失うこと、すぐ解雇される職場環境等、貧困状態の人がより困難な状態に貶められ、「助けて」と言わせない、今の日本の大きな社会全体の問題だと考えます。

 イエス様は常にパリサイ派や律法学者から命を狙われながらガリラヤ湖周辺を精神疾患の人や体の不自由な人や皆から嫌われている人たちを訪ねて一緒に食事をしました。私たちはイエス様の様には出来ませんが「助けよ」と聖書に書いてあるなら、それを実践したいと思いました。

 先ほど話をした実家に帰らない若者はその後、寮付き仕事が見つかり、社長もとても良い人だと報告しに来てくれました。最後に「僕もちゃんと自立したら、皆さんのお手伝いがしたいです」と言ってくれました。何の希望も見いだせなかった若者に住居と仕事と優しさと希望が戻って来た話に、私たちにも声をかける勇気が戻ってきました。

(東岡 牧報/「野宿者を支援する会」代表、聖公会名古屋聖ステパノ教会員)

毎週木曜日、ささしま共生会の炊き出しに並ぶ人たち
※写真 教団新報より


長引くコロナ禍を、仲間と共に乗り切ろう

山谷越年越冬闘争 《山谷》

 昨年秋以降、急速に下火になり、このまま収束するかに見えたコロナ感染は、年末から年始にかけて再び拡大に転じた。そんな不安の中で迎えた山谷の越年越冬闘争は前回に引き続き、城北労働福祉センター前を拠点に、12月29日から1月4日までの1週間、朝晩の食事の提供と1回の衣類分配という、限定的なものにならざるを得なかった。それでも前回の食事は、準備で密になるのを避けてカレー、シチュー、中華丼など、もっぱらレトルト食品に頼ったのに対し、今回は感染防止に配慮しつつ、大量カンパの白菜をセンター前で漬物にしたり、路上にしつらえたかまどで大なべ一杯のアツアツの豚汁などを作ってみんなで食べるという楽しみができた。1月2日と3日には会館2階ホールで、昨年2月に亡くなった風間竜次さん(長年の日雇い労働運動の先輩)の足跡をたどる映像の上映会をやったり、鍼灸師の方が2回来られて診療室に早変わりしたワゴン車の荷台で、仲間たちの疲れを解きほぐしてくださった。夕食の後には毎晩、パック詰めの弁当を持って上野公園と駅周辺で路上生活をしている仲間たちを回った。山谷以外の地域へのパトロールは久しぶりだったが、いろいろと再発見もあった。こうして振り返ってみると、今回の越年はコロナの影響を受けながらも、前回の反省も踏まえて、かなり工夫が凝らされたものになったと思う。

 野宿者にとって、日々の暮らしは厳しさを増している。東京都の山谷対策機関である城北労働福祉センターは、野宿者が就労、医療、宿泊などに活用できる利用者カードの発行を極端に抑えており、一昨年ようやく取り入れた仕事カードの所有者にも希望通りの仕事を回せていない。一方、東京都が玉姫職安を窓口として発注する公園清掃などの特別就労事業も、就労人数の減少やコロナ対策を理由に、2年連続で発注人数を削減しようとしている。野宿者にとって数少ない収入源をこれ以上減らさせてはならない。春に向けて、正念場の闘いが続く。

(松井悠子報/山谷労働者福祉会館活動委員会・ 城西教会員)

カンパでいただいた野菜がたっぷりの豚汁
※写真 教団新報より

※写真 教団新報より

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