【4901・02号】宣教師からの声 主の約束を信じて─James Curtis Hepburn 小暮 修也(明治学院学院長)

 明治学院の創立者の一人であるJ・C・ヘボン(James Curtis Hepburn)博士がアメリカのペンシルベニア州ミルトンで誕生したのが1815年、生誕から204周年になります。

 ヘボンの母は外国伝道に関心を抱いて『ミッショナリー・ヘラルド』という宣教師向けの雑誌を購読し、ヘボンも小さい頃からその雑誌をよく読んでいたとのことです。16歳でプリンストン大学の3年に編入し、そこでラテン語、ギリシャ語、ヘブル語を習得しましたが、これが日本語訳聖書をつくる際に、役立つことになるのです。

 ヘボンは、さらにペンシルバニア大学医学科に入り、1836年には医学博士の学位を授与されました。卒業後、開業医をしていたヘボンは、生涯の伴侶であるクララ・メリー・リート(Clarissa Maria Leete)と出会い、東洋に福音を伝える使命感を確かめ合って結婚いたします。そして、1841年、米国海外伝道協会の要請を受け、新婚旅行を兼ねてシンガポールに旅立ちます。シンガポール、アモイ、マカオに滞在しますが、クララが健康を害したため、ニューヨークに帰国します。1846年にニューヨークで再び開業しますが、人柄と治療の確かさで4つの病院が繁盛し、当時、ニューヨークで五本の指に入るほどの大金持ちであったと言われています。

 そのヘボンは、1883(明治16)年、68歳の時に、次のような手紙を記しています。

 「かつてわたしが、この未知の国に向かって行こうとして、ニューヨークでの富と楽しみと栄達のあらゆる望みを振り捨てたときに、多くの人々は、私を愚か者だとあざ笑いました。けれどもわたしは一時たりとも、そのことを後悔したことはありません。これに対してのわれらの主の約束は、わたしの場合には、満たされてなお余りあります。主は実に私に対して恵み深く、親切であり、またいつくしみ深くありました。ですから、わたしは主の助けによって死ぬまで主に仕えてきたのです。こうした奉仕のうちに年老いていくことは、何と嬉しいことではありませんか」(高谷道男編訳『ヘボン書簡集』岩波書店、1959年)。

 1859(安政6)年に宣教医として来日したヘボンは、庶民の使う日本語に関心を持ちました。ラテン語、ギリシャ語、ヘブル語、マレー語、中国語をすでに習得していましたが、日本語は難しかったようです。特に、英米人の参考となる辞書がなく、まず辞書作りを目ざしました。ヘボンは散歩に手帳を持ち、いつも「コレハ、ナンデスカ?」と聞き、手帳に書き留めていたと言います。このようにして日本語を編集し、1867(慶応3)年に『和英語林集成』(A JAPANESE AND ENGLISH DICTIONARY 1867 )という本格的な和英・英和辞典が完成します。この『和英語林集成』は版を重ねますが、3版から用いられた表記がヘボン式ローマ字として世界各国の人の発音可能なものになるのです。

 1886(明治19)年に3版以降の版権を譲り、その代金2千ドルをヘボン塾から発展した明治学院に寄付し、これにより明治学院に初代ヘボン館が建てられます。

 また、「何とかして一日でも早く日本人の手に聖書を持たせたい」と願い、ヘボン、S・R・ブラウン(Samuel Robbins Brown)、ジェームズ・バラ(John Craig Ballagh)夫妻、タムソン(David Thompson)、D・C・グリーン(Daniel Crosby Green)、奥野昌綱、高橋五郎らが協力して聖書の翻訳作業を進めます。そして、1880(明治13)年に新約聖書、1887(明治20)年に旧約聖書の翻訳が完成します。

 さらに、1873(明治6)年の「キリシタン禁制高札撤去」後の1874(明治7)年、晴れて18名で横浜長老公会を設立します。これが現在の横浜指路教会で、シロとは「救い主」の意味があり、ヘボン夫妻の母教会Shiloh Churchから取られた名前と言われています。

 このような目覚しい働きをしたヘボンですが、弟にあてた手紙で「自分はただ普通の能力と学識をもった一個の人間にすぎない。他の人がなし得ないようなことは何もやっていないのです」と謙虚に記しています。 (Kyodan Newsletterより)

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