【4900号】宣教師からの声 女子学院の土台を創った宣教師たち 梶原恵理子(女子学院資料室)

 女子学院は1870年にジュリア・カロゾルスが設立したA六番女学校から始まる学校です。ジュリアは米国長老教会牧師リチャード・ドッジの娘で1845年に生まれました。父ドッジはリンカーンと弁護士時代の友人で、リンカーンが大統領になってからは従軍牧師をしていました。

 ジュリアは1869年4月、米国長老教会伝道局の宣教師として日本に行く予定のクリストファー・カロゾルスとウエスト・ヴァージニア州にて結婚。同年6月には、開通間もない大陸横断鉄道に乗って西海岸に行き、7月初めにサンフランシスコから船で3週間かけ、7月27日に横浜に到着しました。

 実はジュリア自身も日本への伝道の意欲は強かったようで、帰国後に書いた著書『THE SUNRISE KINGDOM』(1879年刊)に次のように書いています。「船上の人々は日本での伝道事業に賛成ではありませんでした。その人たちは、伝道は禁止されていて、宣教師たちは日本へ行く権利も持っていないのだと話していました。でも私たちは別な風に考え、禁教令より、弟子たちに世界中のどこであろうと、行って伝道するよう命じた主に従ったのです。」

 横浜から10月中旬に東京に移動。翌1870年6月に外国人に開放された築地居留地の6番地をクリストファー・カロゾルスとデヴィッド・タムソンの2人の名義で借り、10月に宣教師館は完成しました。この宣教師館でジュリアが英語を女生徒たちに教え始めたのが、女子学院の始まりです。ジュリアはギリシア語・ドイツ語もでき、相当な教養をもった方で、通訳をつけながら自然科学・歴史・生理学・道徳科学・文法・算数・地理・英会話・英作文をほとんど一人で教えていたといいます。

 しかしA六番女学校は、伝道局から正式な任命を受けた学校ではなかったため、1873年には女子教育を目的とした婦人宣教師のケイト・ヤングマンとマリー・パークの2人が来日し、同じ敷地内の別の建物に、B六番女学校が創られました。その後、夫のカロゾルスは在日の宣教師たちと折り合いが悪くなり、ついに1876年に宣教師を辞任。英語の教師として広島へ向かうことになり、ジュリアの学校は閉校せざるを得なくなりました。これを残念に思った夫カロゾルスの弟子の原胤昭がマリア・ツルーを招き、銀座に開校した原女学校に生徒たちは移りました。

 ジュリアは4カ月ほど原女学校で教えた後、広島に行きますが、1877年にはアメリカに帰って実家に戻り、その後アメリカで2冊、日本で1冊本を出版しています。1914年没。

 B六番女学校の教師ヤングマンは「キリストの精神をいかに社会的に実践するか」を自らの課題とし、女学校内にボランティア・グループの好善社を設立しました。この団体は現在も活動を続けています。

 B六番女学校は移転して校名を新栄女学校(グラハム・セミナリー)としました。ここへは1878年に閉校した原女学校から教師と生徒も移りました。その後、千代田区にあった桜井女学校(1876年創立)と合併し、1890年、女子学院となりました。“女子学院”の名前は在京の宣教師の会議で決められたといい、合併することで資金を集中的に投入し、現在の大学レベルの課程を設けることとしました。

 何本かの細い川がまとまって、“女子学院”という1本の太い川となったのです。そして、その中心となったのはマリア・ツルーです。

 ツルーは1874年に来日。「日本の女子教育は日本人の手で」という信念のもと、日本人教師の陰になりながら、原女学校、新栄女学校、桜井女学校、そして女子学院の教師を歴任し、女子学院の土台を築いた人物です。ツルーはまた、日本の女性のために必要な教育は何かを模索し、女学校内に看護婦養成所や幼稚保育科を設立し、働きながら学べる学校も建てました。また地方に分校のような女学校の創立を助け、卒業生を教師として派遣しました。

 2013年、青山霊園にあるツルーの墓地に、案内のプレートを設置しました。そこには、薄くなってきた墓碑に刻まれている英語の碑文と共にツルーの生没年(1840〜1896)、略歴の他、ツルーが1887年に行った次のような講演の言葉の一部を刻みました。「自分のつとめを怠ったり、自分に力があるのに他を助けなかった時、苦痛を感じるような女性になりなさい」。

 この言葉は、現在も女子学院の生徒たちに受け継がれ、伝えられています。

(Kyodan Newsletterより)

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