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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4581号】荒野の声

2005年6月25日

▼火のような猩々緋の服折を着、唐冠纓金の兜を被った『槍中村』の姿は戦場の華、敵にとっては脅威、見方には信頼の的であった。▼筒井との戦、初陣に臨む主君筋の若武者に請われ、中村新兵衛は服折と唐冠を貸し与える。若武者は『槍中村』の形に脅える敵兵相手に、存分な働きを見せる。一方、黒皮縅の冑、南蛮鉄姿の新兵衛は、二番槍の駒を進める。敵は猩々緋の恨みを黒皮縅に復讐せんとばかり猛り立つ。▼いつもは虎に向かう羊のような怖気が、敵にある。勝手が違うと感じた新兵衛は平素の二倍もの力を振るった。しかし、兜や猩々緋を貸した後悔が頭をかすめたとき、槍が縅の裏をかいて彼の脾腹を貫いていた。▼昼ドラ『真珠夫人』で久しぶりに脚光を浴びた菊池寛の『形』、元々文庫本三頁の掌編を更に要約する愚を犯しても、紹介したかった。▼形か内容か、信仰的にも永遠のテーマだろう。内容のない形は空しい、しかし、形無くして内容は盛れない。ところで、文庫版の巻頭作品は、『恩讐の彼方に』。示唆的だと思う。

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