【4582号】100万人のキリスト者が集まった ドイツ・ハノーファー キルヘンタークを体験して

五月末に五日間の日程でドイツ・ハノーファーで行われた「キルヘンターク」の報告をしてみたい。「キルヘンターク」とは直訳すれば「教会の日」となるが、「教会祭」というのが一番ぴったり来るように思われる。キリストを信じる者が二年に一度集まって「キリストを祝う(つまりは「祭り」)というのが趣旨だからである。元々の起源は一九世紀末の敬虔主義的な信徒運動から始まったこの祭りに、今年は一〇〇万人のキリスト者が全国から集まった。この信徒運動は、ドイツ国内に留まらず、ヨーロッパ全体に広がる国際的な性格を持っていたため、第二次大戦中はナチから禁止されていたという経緯もある。戦後新たに数えて今回が三〇回目となる。信徒運動という性格故に「信徒大会」と訳すこともあるようで、「教会の公式の行事」ではなく、教会はあくまで経済的な後援を行うという慣例になっている。ドイツの教会の性格の一面を知るには、私のような外国人にとって、とてもよい機会であった。
複数の屋外会場に一〇万人が集まる開会礼拝から始まった。開会礼拝の感想を簡単に記すと、使われている讃美歌が大変に明るいものであるように思った。そこで作詞・作曲年を確認すると両方とも一七世紀のものだった。古いものに少し手を加えるだけでずいぶん感じが変わるのだなと思った。またこの教会祭のために新たに讃美歌などが作曲されたようである。
開催期間中、毎朝一時間の聖書研究が四〇のセクションに分かれて行われ、その後様々な行事や展示が開始する。パネル展示の数は実に七五〇以上、それだけの数の団体がドイツ福音主義教会の関係団体ということになる。もちろん市外から来た人たちすべてを収容するホテルの数はなく、ほとんどの人が寝袋持参で、学校の教室を借りてごろ寝をするのがこれまた「伝統」となっている。

「市場化」する教会祭

最近の教会祭の特徴を二つのキーワードでまとめると、「市場化」、「信仰と行為」となろう。
第一の点については、教会祭の拠点地として博覧会会場(メッセ)が用いられたということと関係する。おそらくかなり以前は宿泊場所である学校と会場である(市街地の)教会という二つの拠点地だったのが、教会会場を開催地に持っていない団体や教会会場では収まらない行事をこなすために、博覧会の会場が使われるようになるのである。この、パネル展示をするブースが集まった建物を「可能性の市場」と名付けるようになったのがいつからかは正確にはわからなかった。過去の資料をたどると、少なくとも一九七七年の段階でこの名前が使われている。しかし、その「市場」は当時よりさらに大きくなっている。そこでは、「客」がそれぞれに自分の興味にあった団体から資料をもらい話を聞いたり出し物で楽しむのである。
もちろん入場者からすれば一箇所に集中していた方が便利であるという一方で、電車で二〇分ほどかけないと、本来主会場である教会までは行くことが出来ない。結果的に、このような教会に本拠を持っている団体の催しに参加するためにはあえて足を運ばねばならず、「消費者」からすると「積極的に選択しなければならないもの」ということになってしまうように感じられた。そのような「市場外」の団体として、たとえば自由教会や改革派教会、それから同性愛運動の団体(会場は学校)があった。前回までは同性愛運動の団体の公式行事はなかったので今回は一つの変化があったことになる。ただしそこでの行事は事例報告が中心で、聖書的・神学的考察は主題となっておらず、日本の教会が参考に出来るような議論はまだ始まっていないという印象を受けた。
第二の点については、七〇年代、八〇年代はプログラムの傾向が「行動(アクション)」というキーワードであったのに対して、「信仰と(その応答としての)行為」という変化が認められることを挙げたい。社会的なアクションの基礎を確認するというのが最近の傾向だそうだ。同行してくれたシュナイダー牧師(シュトゥットガルト)から教えられた。

満員の八〇〇〇人会場

最も人が集まったのは二日目夕方、ケーラー大統領やフーバー司教団議長らが登場したシンポジウムで、開始前に八〇〇〇人会場が満員で閉め切られた。延べ三回ある聖書研究のうち一回、「霊性」をテーマにした聖書研究に参加した。本屋でよく見かけるカトリック神父による味わい深い奨励を聞くことが出来た。しかし私の捉えた限りであえて言えば、「霊性」は教会祭共通の基盤をなすものというよりは、「市場に並ぶ数ある選択肢の一つ」にすぎないようにも思われた。また「祈り」「説教」といった信徒の教会生活を支えるものがなお展示や講演からは見出しにくいようにも感じられたし、「伝道」というテーマについてはついぞ見つけることが出来なかった。ただ、「聖餐」についてはその例に当てはまらず、土曜に各教会で行われた聖餐式には通路を埋め尽くす人が集まってパンと杯を分かち合った。日曜日(最終日)に野外会場で行われた三〇万人からなる閉会礼拝の聖餐の様子と併せて、印象深いものであった。
会場は毎回持ち回りで次回(二〇〇七年)はケルン、次々回(二〇〇九年)がブレーメン、またローマ・カトリック教会との二回目の合同となる二〇一〇年がミュンヘンで行われると聞く。
領邦教会の威信をかけて行うだけに、教会ボーイ・ガールスカウトの手伝う姿にも力が入っていた。客として楽しむよりも主催者側の楽しみの方が大きいのではないか。訪問する楽しみと受け入れる楽しみという構図は家庭、そして伝道する教会と同じで、この教会祭にも見いだせるように思った。    (上田彰報)

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