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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4601・02号】宣教師からの声

2006年4月29日

愛は、すべてを完成させるきずな
アルトマン・ユキコ
(PCUSAからHELPへの派遣宣教師)

女性の家HELPは、さまざまな人権侵害や暴力に直面している女性たちに、援助の手を差し伸べようと、日本キリスト教婦人矯風会によって、創立百周年記念プロジェクトとして、一九八六年四月に設立されました。以来、HELPは、電話相談による援助と、国籍、在留資格の有無を問わず、女性、母子に、緊急一時避難の家(シェルター)として、単身者用、家族用の部屋をそれぞれ用意して、安全な宿泊の場を提供してきました。
HELPは多くの方々の支えにより、今年二〇周年を迎えることができました。設立当初は、人身売買に巻き込まれたアジア圏からの女性が圧倒的な数を占めていました。しかし、その国籍も徐々に南米、欧州など多様化していきました。私がここでお手伝いを始めた二〇〇一年頃には、日本人夫の暴力から逃げてくるアジア圏の女性とその子ども(たち)が、多く滞在していました。また、日本人女性の大半も夫の暴力から逃れてきた人たちでした。当時はまだ、家庭内での夫による妻への暴力に対する社会の理解は殆どと言ってよい程ありませんでした。二〇〇一年の一〇月にDV防止法が施行されて初めて、夫の暴力は犯罪行為とされ、DVサバイバーは法的に保護されるようになりました。また、去年八月の刑法改正により、ようやく人身売買に関わった人々の罪が問われ、人身売買サバイバーたちは「犯罪者」として日本から強制送還されることなく、法的に日本を出国できる権利を得ました。
三月下旬現在、HELPの利用状況は、日本人母子二組(DV)、日本人単身女性五人(居所なし)、外国籍二人(DVと人身売買)で、計十二人です。日本人女性の入所が最近増加の一途を辿っていています。現在の利用者五人は五〇代から八〇代までで、それぞれ、様々な理由で安心して戻れる所を持たない方々です。入院の必要はないが、社会生活になじめないといった心の病を抱え、安住の場所を見つけられないでいる女性たちも少なくありません。役所の婦人相談員などに付き添われ、HELPに辿りついたばかりの人たちは硬い表情で不安で一杯な様子です。でも、暖かい食事と暖かい寝床で心身を休ませ、安らげる環境を創ろうと努力しているスタッフの存在に気付いてくれる女性たちは、二、三日程で顔つきや話し方が柔らかくなっていきます。子どもたちも、最初、攻撃的だったり、寡黙だったり、おどおどしたりと様々です。でも、穏やかな周りの様子に素直に応じてくれて、可愛く元気に走り回るようになります。
スタッフはこんな利用者たちの変化を待ち、それぞれに本来備わっている力が少しずつ戻ってきていることを確認し、その都度感激し、安堵します。それから、利用者とスタッフの関係ができていきます。母国に戻りたい女性たちには煩雑な法的手続きの手伝い等のサポートを、アパートを見つけて自立していきたい女性たちには、公的資源の活用の手伝い等を、私たちスタッフは始めるのです。
HELPを必要とせざるを得ない女性たちの多くは、本来備わっているはずの力を過酷な環境の中で失いかけています。その力が少しずつでも戻り始め、それを再び活用できて、自立し、旅立っていくプロセスの手伝いができる場所がHELPであり、そこで奉仕の機会を与えられていることに感謝しています。毎日、「愛は、すべてを完成させるきずなです」の証人となれることも。

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