木下宣世
・はじめに
昨年十月に行われた第35回教団総会の決定により、世界宣教委員会の役割は大きな変換を遂げることとなりました。
それはこれまでの「世界宣教協力」委員会から、「世界宣教」委員会へと名称が変えられたことからもおわかり頂けると思います。
「協力」という文字が無くなったことで、この委員会は世界宣教に協力するための委員会ではなく、世界宣教を自ら担っていく委員会になったと言うこともできるかと思います。
しかし、現在の力ではあまり大風呂敷をひろげるわけにはいきません。身の丈に合った仕方で課せられた課題に取り組んでいく他はありません。
そこでこの委員会がこれまでとどのように変わり、今後どのような働きをしていくのかということを過去・現在・将来という形で具体的に書いて見たいと思います。
・過去
これまでの世界宣教協力委員会はどのような役割を果たしてきたのでしょうか。
第34総会期の世界宣教協力委員会は七名の委員によって構成されていました。その役割は多岐にわたりますが、その内の主たるものは教団が世界の各地に派遣している宣教師の方々に関わる仕事です。
現地からの派遣要請に応えて公募、選任、派遣、任地における生活全般の支援、そして帰任に至るまでの様々な手続きや交渉その他の作業があります。時には現地まで出張しなければならないことも起こってきます。特に担当幹事の役割は多くまた重大で細かい配慮も必要とされる仕事です。
逆に諸外国から派遣されて来る宣教師の受入れに関する仕事もあります。彼らがこの国で十分に使命を果たすことができるようお世話をし、支える仕事です。
彼らの入国や出国のための事務手続き、日本の教会との橋渡しの役割もあります。
さらには諸外国の関係教会との交流、諸会議への出席、共同の協議会や研修会の開催も大切な仕事です。
これらの広汎な任務を遅滞なく進めていくために実務委員会が年に四、五回もたれます。
その他、スイス協約委員会、台湾協約委員会の二委員会が置かれ、それぞれの地の教会や宣教団体との連絡やプログラム、協議会の実行に当たります。
大略以上のような役割を過去において世界宣教協力委員会は担ってきました。
しかし、これまでは世界宣教協力委員会だけが外国からの宣教師の受入や海外の諸教会との交流等の役割を果たして来たわけではありません。
北米(米国とカナダ)からの宣教師と財政支援の受入は、CoC(宣教協力協議会)が担ってきました。CoCは一九四八年に学校協議会、社会事業同盟、教団の三者が構成団体として設立されました。北米の八教会は戦後の日本キリスト教界復興支援のためにIBC(基督教事業連合委員会)を組織しました。CoCはIBCに対応する日本側の団体でした。
IBCは一九七三年にJNACへと改組され、歴史的使命を終えて二〇〇五年に解散しました。CoCもまた、二〇〇七年五月に教団世界宣教部へ発展的に解消することを決議しました。
・現在
以上のようにJNACさらにはCoCの解散を受けて、世界宣教委員会は彼らの任務を全て引き受けることになりました。
仕事の内容は本質的には余りかわっていません。しかし仕事の量が飛躍的に増大したのです。
本委員会の下に置かれていた、スイス協約委員会、台湾協約委員会の外に韓国協約委員会、宣教師人事委員会、国際関係委員会、宣教師支援委員会の四委員会が加わり合計六つの委員会が組織されたからです。
韓国協約委員会は宣教協約を結んでいる大韓イエス教長老教会、基督教大韓監理会、韓国基督長老会との交流や共同プログラムの実行等にあたる委員会です。
宣教師人事委員会は過去において世界宣教協力委員会が扱ってきた宣教師人事に加え、CoCが扱ってきた宣教師人事も一本化して扱うことになりました。それにより当面受入宣教師の数は従来の十七名から八五名に増え、派遣宣教師二二名を加えると一〇七名の宣教師の人事を取り扱うことになったのです。
国際関係委員会はスイス、台湾、韓国以外の全世界の関係教会との宣教協力に関して協議し、推進していく委員会です。特にJNAC解散後の北米関係教会及びドイツの関係教会、また韓国、台湾以外のアジアの諸教会との宣教協力を進めていく役割が与えられています。
宣教師支援委員会は日本に来られた宣教師を様々な仕方で支える委員会です。新任宣教師オリエンテーションや宣教師会議を開催してお互いの交流を計り、彼らができるだけ早く日本の社会に慣れ、十分な働きができるよう手助けするのが任務となります。
このような体制で世界宣教委員会は歩み始めました。しかし、まだ発足したばかりでこれからどのような形になっていくのか不分明な点があります。試行錯誤しながら徐々に本来の使命を果たすべく前進していくことを願っています。
・将来
本来世界宣教委員会はどのような使命を担っているのでしょうか。また、日本基督教団は世界宣教に対してどのようなビジョンを持ち、それと取り組んでいくべきなのでしょうか。
現在、世界各地に派遣されている宣教師の大部分は現地の日本人のために伝道牧会の働きをしておられます。それは大切で欠かすことのできない任務なのですが、さらに手を広げて、現地の教会の働きに加えて頂くこと等も考えられるのではないかと思います。
現実には経済的にも、人的にもできることは非常に限られています。しかし、今与えられている任務を確実に果たしていくと共に、広く世界の諸教会とより密接な関係を築きつつ、協力して世界の宣教に取り組むことを目指していきたいと願います。
(第35総会期 世界宣教委員長)