二日目は、「北村慈郎教師に対し教師退任勧告を行う件」が上程された。議長が提案者のため小林眞副議長が議長を務めた。この件については、いくつかの教区や教区議長などから要望書や抗議、質問が常議員会や議長に寄せられていたため、山北宣久議長はまず冒頭で、そうした抗議・要望等に応答する形で議案の趣旨を述べた。
第二回常議員会における「懇談会」について、これは常議員会の記録には載せないということだったため、懇談会での北村常議員の発題を問題にしているこの議案は「だまし討ち」ではないかとの批判が、議論の中でもあった。それに対して山北議長は、「あの懇談会は公開されたものであり、そこで未受洗者に陪餐させる聖餐執行が明らかにされた。北村氏は以前から同様の発言をしている。その執行を問題としているのである」と反論した。また、「唐突であり、拙速ではないか」などの批判に対しては、「私はかねてよりこの問題を取り上げている。未受洗者陪餐は洗礼を無意味化するものであり、各教区への議長挨拶でも語ってきたし、措置をとるとも明言した。急に闇雲に述べたのではない」と答えた。「教団内に不信感や分裂をもたらす」という危惧に対しては、「未受洗者陪餐がかえって不一致と不信を来たらせる。むしろこれをやめてもらうことが一致をもたらす」と答え、「聖餐に関する議論を経ていない」との批判には、「聖餐論はいろいろあってよいが、聖餐の執行は別である」「何を言ってもよい教団は、何を行ってもよい教団ではない」との考えを述べた。その他、「常議員会で退任勧告はできるのか」など、手続き論に関する問いにも答えた。
常議員から賛成と反対の発言がほぼ交互に聞かれた。反対意見としては主に手続きに関するものと、対話を続けるべきであり本提案は取り下げるべきとする主張であった。「教規第三五条の、常議員会の処理すべき事項の内、どれによるのか」「北村氏の行為はどの条項に抵触したのか」「思想信条の自由に抵触しないか」「この議案は卑劣な議案だ。かねてより未受洗者への配餐の事実を知っていたと言うが、それであれば懇談会での発題を依頼したのは卑劣」「教団の中に大きな混乱を惹起した」。これらの反対意見に対し、山北議長は「議長の総括行為である」「常議員会として声明、意見表明はできる。まして信仰職制的問題について、それをゆるがせにできない。ようやく常議員会で扱える状況になった。何によって教団は一致するのか、それは常議員会の最優先の課題だ」と答え、他の常議員から「未受洗者陪餐が教団内で行われていることは事実であり憂慮している。教規の準則には、洗礼を受け信仰告白をしている者が与るという規定がある」などの賛成意見が述べられた。
北村常議員は、「かつて紅葉坂教会が第八条削除の申請を出した際、教団の方から紅葉坂教会にアクションがあったかのようなことを山北議長は言ったが、何もなかった」と教団の対応を問題にしたが、北村常議員が属する神奈川教区の常議員は、「神奈川教区は、教憲教規に反する規則は教区で扱えないということで紅葉坂教会の規則変更承認申請を教団に上げた」と事情を述べた。また、神奈川教区の他の常議員から、「神奈川教区は様々な立場が話し合ってやてきた。本議案はそれを破壊するものであり、神奈川教区は教団と距離を置くことを考えざるを得ない」とする厳しい批判も聞かれた。
議案に賛成の立場からは、山北議長と同様の趣旨の発言の他、「教会にとって生き死にの問題であり、同じ教団の中で聖餐執行において相反することは成り立たない」「教憲教規や聖礼典についての定めの変更は各個教会の事柄ではない。教団は公同教会の一員であり、そういうものとして聖礼典を考えるべき」「何らかの措置を取らないとすれば、教団に対する信頼を失う」「依って立つところが異なるなら、喧嘩するのでなく、仲良く分かれるべき」などと主張された。
午前中一杯意見が交わされ、小林副議長は採決の可否を諮った上で採決に入り、「未受洗者への配餐を直ちに停止するか、さもなくば速やかに日本基督教団を退任されることを勧告する」議案は、出席二九名中賛成十六名で可決された。なお、議事の後で、重大な内容の採決を強行したことに抗議するとの文書が、佃真人常議員から山北議長宛に十人の常議員を含めた二九人の署名を入れて提出された。
(藤盛勇紀報)