-
-
一行はカナン地方にいる父ヤコブのところへ帰って来て、自分たちの身に起こったことをすべて報告した。「あの国の主君である人が、我々を厳しい口調で問い詰めて、この国を探りに来た回し者にちがいないと言うのです。
- もちろん、我々は正直な人間で、決して回し者などではないと答えました。
- 我々が十二人兄弟で、一人の父の息子であり、一人は失いましたが、末の弟は今、カナンの地方に住む父のもとにいますと言ったところ、
- あの国の主君である人が言いました。『では、お前たちが本当に正直な人間かどうかを、こうして確かめることにする。お前たち兄弟のうち、一人だけここに残し、飢えているお前たちの家族のために、穀物を持ち帰るがいい。
- ただし、末の弟を必ずここへ連れて来るのだ。そうすれば、お前たちが回し者ではなく、正直な人間であることが分かるから、お前たちに兄弟を返し、自由にこの国に出入りできるようにしてやろう。』」
- それから、彼らが袋を開けてみると、めいめいの袋の中にもそれぞれ自分の銀の包みが入っていた。彼らも父も、銀の包みを見て恐ろしくなった。
- 父ヤコブは息子たちに言った。「お前たちは、わたしから次々と子供を奪ってしまった。ヨセフを失い、シメオンも失った。その上ベニヤミンまでも取り上げるのか。みんなわたしを苦しめることばかりだ。」
- ルベンは父に言った。「もしも、お父さんのところにベニヤミンを連れ帰らないようなことがあれば、わたしの二人の息子を殺してもかまいません。どうか、彼をわたしに任せてください。わたしが、必ずお父さんのところに連れ帰りますから。」
- しかし、ヤコブは言った。「いや、この子だけは、お前たちと一緒に行かせるわけにはいかぬ。この子の兄は死んでしまい、残っているのは、この子だけではないか。お前たちの旅の途中で、何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちは、この白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に下らせることになるのだ。」
-
2020年11月6日
-
-
三日目になって、ヨセフは彼らに言った。「こうすれば、お前たちの命を助けてやろう。わたしは神を畏れる者だ。 お前たちが本当に正直な人間だというのなら、兄弟のうち一人だけを牢獄に監禁するから、ほかの者は皆、飢えているお前たちの家族のために穀物を持って帰り、 末の弟をここへ連れて来い。そうして、お前たちの言い分が確かめられたら、殺されはしない。」彼らは同意して、 互いに言った。「ああ、我々は弟のことで罰を受けているのだ。弟が我々に助けを求めたとき、あれほどの苦しみを見ながら、耳を貸そうともしなかった。それで、この苦しみが我々にふりかかった。」 すると、ルベンが答えた。「あのときわたしは、『あの子に悪いことをするな』と言ったではないか。お前たちは耳を貸そうともしなかった。だから、あの子の血の報いを受けるのだ。」 彼らはヨセフが聞いているのを知らなかった。ヨセフと兄弟たちの間に、通訳がいたからである。 ヨセフは彼らから遠ざかって泣いた。それからまた戻って来て、話をしたうえでシメオンを選び出し、彼らの見ている前で縛り上げた。 ヨセフは人々に命じて、兄たちの袋に穀物を詰め、支払った銀をめいめいの袋に返し、道中の食糧を与えるように指示し、そのとおり実行された。 彼らは穀物をろばに積んでそこを立ち去った。 途中の宿で、一人がろばに餌をやろうとして、自分の袋を開けてみると、袋の口のところに自分の銀があるのを見つけ、 ほかの兄弟たちに言った。「戻されているぞ、わたしの銀が。ほら、わたしの袋の中に。」みんなの者は驚き、互いに震えながら言った。「これは一体、どういうことだ。神が我々になさったことは。」
-
2020年11月5日
-
- ヤコブは、エジプトに穀物があると知って、息子たちに、「どうしてお前たちは顔を見合わせてばかりいるのだ」と言い、更に、
- 「聞くところでは、エジプトには穀物があるというではないか。エジプトへ下って行って穀物を買ってきなさい。そうすれば、我々は死なずに生き延びることができるではないか」と言った。
- そこでヨセフの十人の兄たちは、エジプトから穀物を買うために下って行った。
- ヤコブはヨセフの弟ベニヤミンを兄たちに同行させなかった。何か不幸なことが彼の身に起こるといけないと思ったからであった。
- イスラエルの息子たちは、他の人々に混じって穀物を買いに出かけた。カナン地方にも飢饉が襲っていたからである。
- ところで、ヨセフはエジプトの司政者として、国民に穀物を販売する監督をしていた。ヨセフの兄たちは来て、地面にひれ伏し、ヨセフを拝した。
- ヨセフは一目で兄たちだと気づいたが、そしらぬ振りをして厳しい口調で、「お前たちは、どこからやって来たのか」と問いかけた。彼らは答えた。「食糧を買うために、カナン地方からやって参りました。」
- ヨセフは兄たちだと気づいていたが、兄たちはヨセフとは気づかなかった。
- ヨセフは、そのとき、かつて兄たちについて見た夢を思い起こした。ヨセフは彼らに言った。「お前たちは回し者だ。この国の手薄な所を探りに来たにちがいない。」
- 彼らは答えた。「いいえ、御主君様。僕どもは食糧を買いに来ただけでございます。
- わたしどもは皆、ある男の息子で、正直な人間でございます。僕どもは決して回し者などではありません。」
- しかしヨセフが、「いや、お前たちはこの国の手薄な所を探りに来たにちがいない」と言うと、
- 彼らは答えた。「僕どもは、本当に十二人兄弟で、カナン地方に住むある男の息子たちでございます。末の弟は、今、父のもとにおりますが、もう一人は失いました。」
- すると、ヨセフは言った。「お前たちは回し者だとわたしが言ったのは、そのことだ。
- その点について、お前たちを試すことにする。ファラオの命にかけて言う。いちばん末の弟を、ここに来させよ。それまでは、お前たちをここから出すわけにはいかぬ。
- お前たちのうち、だれか一人を行かせて、弟を連れて来い。それまでは、お前たちを監禁し、お前たちの言うことが本当かどうか試す。もしそのとおりでなかったら、ファラオの命にかけて言う。お前たちは間違いなく回し者だ。」
- ヨセフは、こうして彼らを三日間、牢獄に監禁しておいた。
2020年11月4日
-
-
ヨセフは、エジプトの王ファラオの前に立ったとき三十歳であった。ヨセフはファラオの前をたって、エジプト全国を巡回した。
- 豊作の七年の間、大地は豊かな実りに満ち溢れた。
- ヨセフはその七年の間に、エジプトの国中の食糧をできるかぎり集め、その食糧を町々に蓄えさせた。町の周囲の畑にできた食糧を、その町の中に蓄えさせたのである。
- ヨセフは、海辺の砂ほども多くの穀物を蓄え、ついに量りきれなくなったので、量るのをやめた。
- 飢饉の年がやって来る前に、ヨセフに二人の息子が生まれた。この子供を産んだのは、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトである。
- ヨセフは長男をマナセ(忘れさせる)と名付けて言った。「神が、わたしの苦労と父の家のことをすべて忘れさせてくださった。」
- また、次男をエフライム(増やす)と名付けて言った。「神は、悩みの地で、わたしに子孫を増やしてくださった。」
- エジプトの国に七年間の大豊作が終わると、
- ヨセフが言ったとおり、七年の飢饉が始まった。その飢饉はすべての国々を襲ったが、エジプトには、全国どこにでも食物があった。
- やがて、エジプト全国にも飢饉が広がり、民がファラオに食物を叫び求めた。ファラオはすべてのエジプト人に、「ヨセフのもとに行って、ヨセフの言うとおりにせよ」と命じた。
-
飢饉は世界各地に及んだ。ヨセフはすべての穀倉を開いてエジプト人に穀物を売ったが、エジプトの国の飢饉は激しくなっていった。
- また、世界各地の人々も、穀物を買いにエジプトのヨセフのもとにやって来るようになった。世界各地の飢饉も激しくなったからである。
-
2020年11月3日
-
-
そこで、ファラオはヨセフを呼びにやった。ヨセフは直ちに牢屋から連れ出され、散髪をし着物を着替えてから、ファラオの前に出た。
- ファラオはヨセフに言った。「わたしは夢を見たのだが、それを解き明かす者がいない。聞くところによれば、お前は夢の話を聞いて、解き明かすことができるそうだが。」
- ヨセフはファラオに答えた。「わたしではありません。神がファラオの幸いについて告げられるのです。」
- ファラオはヨセフに話した。「夢の中で、わたしがナイル川の岸に立っていると、
- 突然、よく肥えて、つややかな七頭の雌牛が川から上がって来て、葦辺で草を食べ始めた。
- すると、その後から、今度は貧弱で、とても醜い、やせた七頭の雌牛が上がって来た。あれほどひどいのは、エジプトでは見たことがない。
- そして、そのやせた、醜い雌牛が、初めのよく肥えた七頭の雌牛を食い尽くしてしまった。 ところが、確かに腹の中に入れたのに、腹の中に入れたことがまるで分からないほど、最初と同じように醜いままなのだ。わたしは、そこで目が覚めた。
- それからまた、夢の中でわたしは見たのだが、今度は、とてもよく実の入った七つの穂が一本の茎から出てきた。
- すると、その後から、やせ細り、実が入っておらず、東風で干からびた七つの穂が生えてきた。
- そして、実の入っていないその穂が、よく実った七つの穂をのみ込んでしまった。わたしは魔術師たちに話したが、その意味を告げうる者は一人もいなかった。」
- ヨセフはファラオに言った。「ファラオの夢は、どちらも同じ意味でございます。神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお告げになったのです。
- 七頭のよく育った雌牛は七年のことです。七つのよく実った穂も七年のことです。どちらの夢も同じ意味でございます。
- その後から上がって来た七頭のやせた、醜い雌牛も七年のことです。また、やせて、東風で干からびた七つの穂も同じで、これらは七年の飢饉のことです。
- これは、先程ファラオに申し上げましたように、神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお示しになったのです。
- 今から七年間、エジプトの国全体に大豊作が訪れます。
- しかし、その後に七年間、飢饉が続き、エジプトの国に豊作があったことなど、すっかり忘れられてしまうでしょう。飢饉が国を滅ぼしてしまうのです。
- この国に豊作があったことは、その後に続く飢饉のために全く忘れられてしまうでしょう。飢饉はそれほどひどいのです。
- ファラオが夢を二度も重ねて見られたのは、神がこのことを既に決定しておられ、神が間もなく実行されようとしておられるからです。
- このような次第ですから、ファラオは今すぐ、聡明で知恵のある人物をお見つけになって、エジプトの国を治めさせ、
- また、国中に監督官をお立てになり、豊作の七年の間、エジプトの国の産物の五分の一を徴収なさいますように。
- このようにして、これから訪れる豊年の間に食糧をできるかぎり集めさせ、町々の食糧となる穀物をファラオの管理の下に蓄え、保管させるのです。
- そうすれば、その食糧がエジプトの国を襲う七年の飢饉に対する国の備蓄となり、飢饉によって国が滅びることはないでしょう。」
- ファラオと家来たちは皆、ヨセフの言葉に感心した。
- ファラオは家来たちに、「このように神の霊が宿っている人はほかにあるだろうか」と言い、
- ヨセフの方を向いてファラオは言った。「神がそういうことをみな示されたからには、お前ほど聡明で知恵のある者は、ほかにはいないであろう。 お前をわが宮廷の責任者とする。わが国民は皆、お前の命に従うであろう。ただ王位にあるということでだけ、わたしはお前の上に立つ。」 ファラオはヨセフに向かって、「見よ、わたしは今、お前をエジプト全国の上に立てる」と言い、 印章のついた指輪を自分の指からはずしてヨセフの指にはめ、亜麻布の衣服を着せ、金の首飾りをヨセフの首にかけた。 ヨセフを王の第二の車に乗せると、人々はヨセフの前で、「アブレク(敬礼)」と叫んだ。ファラオはこうして、ヨセフをエジプト全国の上に立て、 ヨセフに言った。「わたしはファラオである。お前の許しなしには、このエジプト全国で、だれも、手足を上げてはならない。」 ファラオは更に、ヨセフにツァフェナト・パネアという名を与え、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトを妻として与えた。ヨセフの威光はこうして、エジプトの国にあまねく及んだ。
-
.footer

日本基督教団
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18-31
Copyright (c) 2007-2025
The United Church of Christ in Japan
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18-31
Copyright (c) 2007-2025
The United Church of Christ in Japan





