放射線の恐怖の中で、礼拝を守り、子どもたちを守る《福島県中通り地方の諸教会伝道所》(以下教会と略)を6月28~29日、教団関係者一行4人で訪問した。全ての教会を訪ねることは日程的に無理があった。スケジュール調整は不可能と判断し、幾つかの重点取材教会には事前の連絡を入れたものの、他は、いきなり訪ねた。東北教区福島地区、いわき・郡山地区25教会の内、20が中通り地方にある。その内、11教会と他に教会関係施設で、現況を見聞きすること、聖書を朗読し祈ることが許された。 それぞれの町の被害程度も性格も違うし、地震に遭遇した教会員一人ひとりの生活も性格も違うのだから当然、教会毎に状況は多様だ。一方で、この地に住む人々は、《放射能汚染への危機感を、共有させられ》ている。これも所によって放射線数値が異なるし、自ずと危機感にも程度差がある。しかし、或る教会員が漏らしたように、一見平穏な日常が続いているようでありながら、「目に見えない不安・恐怖が、常に、ぴったりと背中に張り付いている」のだ。各地で放射線量の数字が問題になる。つい100日前までは、特殊な専門用語で一部の人にしか馴染みがなかったマイクロシーベルトという術語が、日常の言葉として、人々の会話の中を飛び交う。昼食を取った蕎麦屋でも、駅前の人混みでも。各地の線量はそれぞれに異なる。しかしどの地でも、これを深刻に受け止める人と、楽観する人とが存在する。年齢差が大きいとも言われる。中高年以上の人は、自分にとっては最重要なことではないと考えるが、若い人、特に小さい子どもを持つ人ほど、事柄を深刻なものとして受け止める。当然かも知れない。以下は或る牧師の見解。「しかし、中高年にも孫がいる。必ずしも、年齢に比例はしない。深刻に受け止める人と、楽観する人との差は、実は、深刻に受け止め、それに何らかの対応ができる人と、それができないからこそ、楽観的観測にしがみつきたい人との差ではないのか。より短絡的に言えば、避難可能な人と不可能な人との差ではないのか」。自主避難勧告が出ていない地域でも、多くの教会員が町を離れたと聞いた。大多数の、例え望んでも土地を離れることの出来ない者、避難先を持たない者は、どうしても、このことを批判的に受け止める。郷土を捨てて逃げ出した、教会を見捨てたという感想を持つ。町民の間に、そして《教会員の中にも、亀裂が》入る。「建物のことは、お金で何時かは解決が着く、この亀裂の方が深刻だ」と語る牧師。「自分はがまんできるし、この地に留まり働くことに使命を感じるが、そのために子どもを犠牲にはできない」と語る牧師。中学校では、防塵マスクを着ける派と着けない派とに、生徒が分裂しているという話さえ聞いた。あれほどの衝撃にも耐え忍び続け、世界から賞賛された人々の心がギスギスし、労りの心が反感や嫉妬や憎悪に変えられてしまうのに、100日という日数は、十分な数字なのだ。町を車で流した程度では、断定的なことは言えないが、意外な程にマスクを着けた人は少ない。遠慮が働くのだろうか。それとも、危機感を強めた人は、既に避難したか、或いは、外出を控えているのだろうか。中通り地方の諸教会には、幼稚園、保育園を併設する所が多い。ここでも、放射線が人々の心を射貫く。或る牧師は、「この地で子どもを集め続けていることは、子どもの命を危険に曝している犯罪行為への荷担なのではないか」と悩む。しかし、「今、この時、この地だからこそ、必要とされている」とも思う。《一人の人の心さえも二つに引き裂かれ》ているのだ。給食も含め「地元の食材は一切提供しない。食べない」と言う牧師と、「安全を確認しながら、積極的に地元の食材を入れている」という牧師。それぞれの話を聞いていると、それぞれに説得力があるように聞こえる。どちらにも肯きたくなる。しかし、二人の見解は真反対なのだ。どちらが正しい、間違っているなど、誰が言えるだろうか。会堂牧師館、教会員宅、この被害状況も様々だ。直接の地震被害だけではなく、放射線のこと、勤務していた工場の閉鎖など、《生活基盤の崩壊の方が》より深刻度が大きい。再建が、建物の再建のことを意味するのならば話は単純だが、個々の教会員の生活基盤の再建なくして、教会の真の復興はあり得ない。これは、イデオロギーではない。ごく実際的な意味でもそうなのだ。避難したり生活が破綻したりで、礼拝出席も献金も半減した教会がある。大抵の教会には、大きな蓄えなどはないから、即、牧師謝儀が出せない、教会の日常活動に支障が出るなど、目に見える故障が起こっている。福島教会のように会堂を取り壊さざるを得なかった教会があり、方針を定めるために脅えながら診断を待つ教会、そこで明らかになった被害状況と、修復・耐震化費用の数字に呆然とする教会がある。殆どの教会が、まだ具体的な再建計画を持つには至っていない。国レベルと同じ矛盾が、教会でも起こっている。教団・教区としては、個々の教会の被害実態が明らかになり、対応策が採られ、費用の全容が見えて来ないと、復旧のための援助額を決定しがたい。しかし、個々の教会としては、どの程度の援助金が得られるかが不明では、《再建計画が立てられない》。個々の教会にしろ、全教団的にしろ、復興・再建のビジョンがなければ事は進まないのは理解できるが、もう時間がない。一刻も早く、せめて、将来への確かな約束を届け、安心・希望を持って貰わなくてはならない。教団新報では、大震災後、三陸沿岸、福島浜通り、福島市周辺、栃木・群馬、千葉・茨城と6次に渡って、訪問取材を行って来た。今回は、これまでどのコースからも外れていた福島中通りの南地区を訪問するのが、主目的であった。ここでも、福島・郡山ほどではないにしろ、一帯に放射線レベルは高く、所謂ホットスポットとされる町村もある。また、白河周辺では、群発地震と言える程に、震度の大きい余震が続いた。第36総会期第6回宣教委員会が、昨年9月27~29日、福島県南にある諸教会・施設で開催された。教団新報11月6日号に、その報告が掲載されている。図らずも今回の訪問日程も、ほぼこれに重なった。しかし、その報告すべき内容は全く別物に変容してしまった。「先ず、牧人会『白河めぐみ学園・白河こひつじ学園』を訪ね、山下勝弘理事長から」ここまでは、全く同じ文章で通用する。しかし、そこで聞いた話は、専ら同じ牧人会の知的障害者厚生施設《『あだたら育成園』の甚大な地震被害》のことだった。30人の利用者がいる。施設の性質上、待ったなし、一日も早い復旧がなされなければならないが、「概算3億円の費用が要る。公的援助2億が期待できるが、残る1億は、何らかの募金・援助に頼るしかない」とのこと。山下理事長は、1968年の設立準備会発足以来、殆ど何もない所から、現在の11施設、諸事業を立ち上げて来た。その間には幾多の困難も障害もあった。しかし、「それに立ち向かう心構えも準備も、時間もあったが、この度は全く突然のこと、時間的余裕もない」と戸惑いを隠せない。ここでも、教団の支援が待ち望まれている。その後、ごく近隣にある川谷教会と保育園を訪ね、施設・設備の見学がてら近況を聞いた。新報にも載ったように「子ども子育て応援センターを通じての地域宣教」が新展開されている。豊かな自然の真っ直中にある木造平屋の素晴らしい建物施設、しかし、美しく整備された《庭に園児が入ることは》出来ない。放射線の不安が大きく、活動が様々制約される中でも、地元の食材を積極的に取り入れるなど、職員父母が心を合わせて、「負けるものか」と戦う姿が見られた。矢吹教会の岡村宣牧師から、「認定子ども園・ポプラの木」、鏡石伝道所が運営する「認定子ども園・ぶどうの木」を案内して貰い、更に須賀川教会の「栄光幼稚園、認定子ども園・オリーブの木」を見学した。4教会(矢吹教会、川谷教会、鏡石伝道所、須賀川教会)の伝道協力会における複数教会・複数施設の共働についての実践は、前述の新報に報告されている。ここでは、度重なる余震もあり、未だ真新しい施設建物や調度にも、軽微ではない地震被害があった。しかし、昨春赴任したばかりの岡村牧師は、被害状況を説明する以上に、工夫された施設・事業の展開を語ることに熱心だった。同行の内3名まで幼稚園・保育所の責任を持っており、これに耳を傾け、感心し頷く。建物、園庭、調度には「うらやましい」の声さえ。その一方、この事業をリードして来た須賀川教会の今野善郎牧師は、「疲れが溜まっており、ついつい、いらだった気持ちを職員に向けているかも知れない」と省みる。ここでも放射線被害の中で、いかに子どもたちの安全を守るかという《重大な課題がのしかかって》いる。郡山以南は、高齢化が余所よりも深刻な地域だ。教会は小規模で、かつてはその存続さえ危ぶまれていた。しかし、僅かこの10年程の間に、幼稚園・保育所を軸に、新しい福音宣教の力が湧き上がっている。園児たち、その母親、職員、関係者が、ここを通じて福音に出会う。一日も早く、日常を取り戻して、子どもたちが恵まれた園庭で自由に遊び、今野牧師、岡村牧師たちの伝道の幻が育っていく様を見たいものだ。同様のことは、川谷教会にも全く当て嵌まる。さて、最初の訪問地は白河教会、かつて新報4511号「人ひととき」に登場した内山幹男さんに再会する。彼は農民であり科学者、そして教会の会計役員。数々の、特に福祉に関わる発明があり、この普及とメンテナンスのために、全国を飛び回り、また科学雑誌に寄稿する。この度は、「簡単に手に入らないから、放射線測定器を自作した」と言う。たった一人、研究所も設備もスタッフも持たず、十分な材料さえなくとも、知識技術があれば、大抵のことは出来るのだ。国が悪い、電力会社が悪い。その通りだ。だからこそ、一人ひとりが立ち上がり、その上でこそ、力を合わせなくてはと、今更のように思う。この報告に、結論めいたものはない。記事掲載時には大震災から4ヶ月が経っている。全てのことが後手後手で、復旧は捗らない。まして、真の復興は、未だ端緒に着いたばかり、新報も、このことを追跡し、一緒に歩いて行くしかないと覚悟している。 (新報編集部報)
眞嶋宣道氏(別帳教師)
11年5月2日、逝去。86歳。東京都に生まれる。’53年日本基督教神学専門学校を卒業、同年弘前教会に赴任、下川口教会を経て’57年より’59年まで上総大原教会を牧会した。遺族は息・眞嶋威さん(新津田沼教会主任担任教師)。
山畑勝美氏(隠退教師)
11年5月22日、逝去。86歳。埼玉県に生まれる。’52年日本聖書神学校を卒業、同年美唄教会に赴任、’59年よりボリビアでの開拓伝道を経て、’70年より酪農学園に務め、’90年より’94年まで北広島教会を牧会し、隠退した。遺族は妻・山畑佳惠さん。
畠澤雄光氏(隠退教師)
11年6月4日、逝去。97歳。岩手県に生まれる。’75年農村伝道神学校を卒業、’77年鶴川教会に赴任、千厩教会を経て’80年より03年まで伊予長浜教会を牧会し、隠退した。遺族は妻・畠澤廣子さん。
主題 現代日本の危機とキリスト教
東日本大震災を通して問われたこと
日 時 8月29日(月)13:30~18:00
30日(火)10:00~16:00
会 場 日本基督教団 銀座教会
発題者
中山 昇氏(清教学園元理事長)
キリスト教学校の視点から
芳賀 力氏(東京神学大学教授)
神学者の視点から
稲松義人氏(日本キリスト教社会事業同盟理事長)
キリスト教社会福祉の視点から
岡本知之氏(西宮教会牧師、教団副議長)
教会・牧師の視点から
特別講演会講師
大木英夫氏(聖学院大学大学院長)
*参加費無料
開会礼拝で献金があります(東日本大震災救援のため)
*連絡先
東京都新宿区西早稲田2-3-18 日本基督教団事務局
TEL03-3202-0541 FAX03-3207-3918
7月5~6日、教団会議室にて、教団救援対策本部第3回会議が開催された。
今回からは、奥羽・東北・関東の三教区の議長と教団新報主筆も陪席して議事を進めることとなった。
前回記録承認の後、第3回常議員会報告、救援対策委員会報告、「東日本大震災海外献金プロジェクト」関連報告等と続き、さらに、日本キリスト教社会事業同盟と宣教協力学校協議会における取り組みの報告がなされた。
教区報告として、奥羽教区については、邑原宗男議長が、宮古教会、新生釜石教会、千厩教会の会堂等の被害状況、大船渡教会における支援物資配布活動のほか、各教会におけるボランティア活動等について報告した。
東北教区については、高橋和人議長が、被災教会の状況のほか、東北教区被災者支援センター、教区教会救援復興委員会の活動についての報告をした。特に、福島第一原発事故が引き起こした放射能汚染による避難状況など、建物の補修といったこととは違う支援活動の必要性と困難さについて報告した。
関東教区については、秋山徹議長が、同教区の被災支援委員会による被災教会の状況調査結果と現在の見通しについて報告した。
東京教区については、長崎哲夫委員が、千葉支区の安食教会の被害状況について報告した。
また、各教区報告に合わせて、本対策本部が派遣した調査員の報告もなされた。
報告を受けて、この度の震災による被災地域が広大で、被災教会数も多いことから、なかなか被害総額を定めることができない現状であることを改めて確認した。
なお、奥羽・東北・関東の各教区に直接寄せられた献金についても、その全体を把握することとした。
その後、各教区被災教会への支援の公平性や、放射能汚染問題についての対応などについて協議し、今後も継続して検討することとした。
また、「日本基督教団東日本大震災救援募金」の具体的な推進について話し合ったほか、教団に寄せられている個々の支援要請等についても審議した。
次回(第4回)会議は、8月5日、東京山手教会にて開催することとした。
(雲然俊美報)
6月28~29日の2日間にわたって第37総会期、第3回教育委員会が開催された。
東日本大震災および原発事故の深刻化は子どもを念頭においた教会教育の現場でも重大な影響を及ぼしている。それは教育委員会の議論にも深く関わってくることである。
教育委員会が毎年全国の教会に向けて依頼しているクリスマス献金の送付先について、例年であれば世界の子どもたちと、日本の子どもたちのためにということであったが、今回は東日本大震災を覚えて、特に教団の献金と一つとしていくことを前回委員会でも確認した。今回はその送付先を具体的に検討しようというところでも、岩手・宮城の状況と、放射能汚染のもとにある福島の状況とを一つのこととして考えられないなど、献金送付先の決定についても難航した。
そのような中で常議員会の救援方針に基づいて、子どもたちのために用いられるよう献金していけるようにと再度確認がなされた。また原発事故に伴う放射能の脅威から子どもたちを守るための提言を教団として出せるよう教育委員会としても働きかけて行くこととした。
その他、今後予定しているプログラムの検討を行った。
まず、2011年9月21日に開催する青年担当者会、宣教師との懇談会は、前総会期より始まって今回が2回目になる。それぞれの趣旨の確認をしつつ内容を深めていきたい。
次に、2012年2月に大阪教区を会場に行われる、教会教育セミナー、教区教育担当者会についても検討した。今回は特に「中高生への伝道」を念頭におき、ミッションスクールへの訪問なども含めて開催していくこととした。
同じ2012年8月には台湾の青年たちとのユースミッションが計画されている。関西で迎え、関東から送り出すまでのプログラムの詳細を検討した。
また、キリスト教教育主事認定試験規定の変更に伴い、今後の主事認定のありかたについて協議された。2013年より実施される新しい認定試験規定に基づく受験資格を公正に確認できるよう整えていく作業を始めることとした。
(清藤淳報)
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