2024年 在日大韓基督教会 日本基督教団 平和メッセージ
2024年 平和聖日
日本基督教団 総会議長 雲然俊美
在日大韓基督教会総会長 梁栄友
主よ、平和をわたしたちにお授けください。わたしたちのすべての業を 成し遂げてくださるのはあなたです。わたしたちの神なる主よ あなた以外の支配者が我らを支配しています。 しかしわたしたちは あなたの御名だけを唱えます。
(イザヤ書 26章12節〜13節)
涙も枯れるほどの恐怖が、いまもガザ地区を覆います。主イエスが、愛と平和と和解をもたらすためにこの世に遣わされ、愚かなわたしどものために十字架刑となった地において、多くの無辜の命が強大な軍事力によって弄ばれるように奪われています。「わたしたちの神なる主よ あなた以外の支配者が我らを支配しています」。それは同時に、わたしどものうちにある愚かさでもあります。
しかしわたしどもは、何度でも主イエスに立ち帰り「あなたの御名だけを唱えます」。そしてどうか「平和をわたしたちにお授けください」と悔い改めと共に深く祈り求め、ここに平和メッセージを宣言します。
<パレスチナにおける紛争について>
近代以降、植民地主義と資本主義による支配の根源が凝縮されたパレスチナにおいて、剥き出しの恐怖と残虐さが生々しく日々、私どもの前に、マスメディア、ソーシャルネットワーク等を通じて激しく突き出されています。こうしている今も、イスラエル軍は西側諸国の物理的心理的援護を背景に、罪なきパレスチナ人を殺戮し、ガザ地区の人びとは昼夜問わず恐怖に包まれ、地獄を生きているのです。かつてホロコーストの地獄で命を奪われたユダヤ人、被差別民、障がい者たちの魂、同時に今、世界中の抑圧された人びとの魂もまた、おぞましいジェノサイドの中で、再び容赦なく踏み潰されています。
それでも同じ時にまた、世界中で、この紛争を終わらせようと多くの人びとが声を上げ、世界中のユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒の人びともまた傷ついたパレスチナの人びとのために祈りを共にしています。わたしどもも、パレスチナに一刻も早く真の平和がもたらされるよう祈ります。
<日韓の歴史について>
1910年の朝鮮併合により日本の植民地とされた朝鮮半島から、日本の軍需工場や鉱山、炭鉱に労働力として強制連行された朝鮮人労働者を追悼する碑が日本各地に建立されています。その中で2024年1月29日、多くの市民の反対の声を無視し、群馬県知事は群馬県立公園「群馬の森」に建立された「記憶 反省 そして友好」と刻まれた朝鮮人労働者追悼碑の撤去工事を開始しました。在特会を含めた右派系市民団体による誤った歴史宣伝を元に、強制連行などなかった等と歪められた歴史理解に行政、政府が同調し、日本各地で同様の事態が進んでいます。
日本基督教団と在日大韓基督教会は、このような誤りと悪意に満ちた日韓の歴史を継承するのではなく、朝鮮半島と日本、東北アジア全体の真の平和を愛と和解と調和の中で共に未来を目指し歩み続けます。
<アジアの平和について>
2023年度の向こう5年間の日本の防衛費は43兆円という空前の金額となりました。2022年にイギリス、イタリアと戦闘機開発を合意した結果、2024年3月には遂に第三国へ最新型戦闘機を輸出することを国会審議もせずに決定していまいました。日本は他国から眺めれば巨大な軍事国家を目指し、国際社会における平和の秩序を保つことを放棄するのではという懸念を、かつて日本が侵略した地域の人びとにもたらします。
また、台湾有事を見据えた中国への牽制としての米国軍事同盟の強化は、朝鮮半島と南西諸島を戦闘地域と想定しています。とりわけ沖縄では、2016年以降、米軍基地のみならず自衛隊基地の増強と新たな基地設置が続いており、そこに暮らす人びとの未来を脅かし、平和を遠ざけています。軍事で平和は守れません。わたしどもは繰り返し、何度でも訴え続けます。そして、日韓の市民とアジアの人びとと共に歩みます。
<原発依存からの脱却について>
東京電力福島第一原子力発電所から放射能汚染水海洋投棄が始まり、2024年度は54,700トンの汚染水が投棄される予定で、トリチウムの総量は約14兆ベクレルになると報道されています。
また、2024年1月1日に起きた能登半島地震では、震源地の近くに多くの原発があり、多くの人が第二の原発被害を思い浮かべました。幸いにも原発に被害はないとされましたが、避難経路に多くの課題があることが浮き彫りとなりました。
振り返れば、2011年の東京電力福島第一原発のメルトダウン・爆発により海洋に流れ出た、希釈されていない放射性液体廃棄物は、セシウム137で15,000兆ベクレルであり、年間管理目標値2,200億ベクレルの約7万年分です。この放射性物質は、いまも海洋を移動しています。地震の多い日本の国土において原発ほど命を脅かすものはなく、直ちに運転を停止させ、速やかに廃炉への作業に取りかからねばなりません。
わたしどもは、人間の力では制御できない原発に依存するエネルギー政策からの脱却を強く求めます。