2022年10月20日
税理士法人アイパートナーズ 浜田 晴香
1. 差異発生の要因
収支計算書において、2019年度の次期繰越収支差額と2020年度の前期繰越収支差額は会計上一致するのが原則です。にもかかわらず、これらに差異が生じた理由は、繰越収支差額の計算に関係する“会計科目の性質設定”の誤りを正したためです。
貸借対照表には、“普通預金”や“未収金”など様々な科目がありますが、収支計算書と連動させるために、会計ソフトではそれぞれの科目につき「資金科目・非資金科目」といった性質設定も行われています。繰越収支差額は、貸借対照表に表示された科目のうち、性質が「資金科目」であるものの集計です。「資金科目」には、現金預金その他短期的に現金化されることが見込まれる未収金などの流動資産(プラスの資金科目)と短期的に支払が予定されている未払金などの流動負債(マイナスの資金科目)があります。
2020年度において、裏付けのない科目を整理した際、備品購入引当金の“性質”が本来の「非資金科目」でなく「資金科目」として登録されていたことが判明しました。そこで、備品購入引当金の性質設定を「非資金科目」に訂正したことで、2020年度の前期繰越収支差額が再集計され、2019年度末の次期繰越収支差額と差異が生じることとなりました。
※引当金は、将来発生する特定の費用や損失に備えて見積金額をあらかじめ費用に計上しておくものであり、近々支出が約束されたものではないため「非資金科目」に分類される。
2. 繰越収支差額の変更が現金残高証明及び預金残高証明に及ぼす影響について
先の説明のとおり、備品購入引当金の性質設定を「資金科目」から「非資金科目」に変更しただけで、全ての科目の名称も残高も何ら変わっていません。そのため、各科目の残高は、変わらず現金残高証明及び預金残高証明と一致しています。
備品購入引当金の性質設定が「資金科目」とされていた2019年度までは、50万円が誤って繰越収支差額にマイナス集計されていましたが、2020年度以降は繰越収支差額が正しく集計されるようになりました。
繰越収支差額の変更は、現金残高証明及び預金残高証明に影響を及ぼすものではありません。
3. 要因説明の欠落
本来、科目の性質設定の変更を行った2020年度決算において、指摘事項として記載する必要がありましたが、その記載が欠落してしまいました。
各科目の残高に影響を及ぼすものではないこと、前年度から引継いだ繰越収支差額が自動で性質属性に従い再集計されたことから、注意が届きにくい項目であったようです。