礼拝-神の恵みを生きる
「キリスト教信仰の奥深さをもっと受け止めたい」と情熱的に語る正彦さんは83歳。現代史の激動の時代を歩んできた。
勤め先の北海道庁で、クリスチャン同僚の感化を受け、幾つかの教会を経て、月寒教会の礼拝へと通うようになった。
受洗への大きなきっかけは、結婚を考え始めたことだった。日本旧来の封建的な家理解とは訣別したい。新憲法による新しい夫婦像、その根底にあるキリスト教信仰を家庭の基盤にしたいと願った。将来を約束した二人で共に求道し、信仰を共有した家庭形成を祈った。1962年9月に結婚、クリスマスに揃って洗礼を受け、クリスチャン・ホームの出発となった。
信仰生活の第一歩を踏み出した頃、日本社会は「政治の季節」の只中で、大きく揺れ動いていた。信仰と社会生活の関係、両者の結びつきが日々の問いであった。大塚久雄氏や隅谷三喜男氏の著作から学び、また日本基督教団に連なる者として、同じ教団の教会である滝野川教会発行の月刊誌『形成』の購読が、まさに信仰と生活を形成する大きな力であったと語る。
家庭に一男一女を与えられた。「子どもたちは教会に育ててもらった」と信仰継承について話す。息子さんは教会で伴侶と出会い、お孫さんたちも受洗して、第二代クリスチャン・ホームを形成。娘さんは、キリスト教文学の研究者として活躍中。
振り返って、すべての根底は「教会を信ずること」であると告白する。「教会の伝統とは古色蒼然としたものではない。信仰共同体の礼拝こそ伝統である。個人のものではない、公同の教会。我々の信仰はそこでこそ支えられ、錬磨され、正しい方向に向けられ、広げられていく」。祈祷会の証での言葉である。そして「古いとか時代遅れとか言われようと、第一に〈主の祈り〉、第二に〈信仰告白〉を真に我らは信じかつ告白す、第三に〈生活綱領〉を私たちの信仰に生かすことを共に祈り励む。神の恵みを生きる証しこそ伝道だから」と力説する正彦さんであった。