「部落解放九州教区キャラバン2013」を6月20日から7月3日まで、日本基督教団九州教区と部落解放センターの共催(主催・同実行委員会)で開催しました。キャラバン隊は小林明(部落解放センター主事・隊長)、隊員に応募してきた金耿昊(キムキョンホ)さん(在日大韓基督教会横須賀教会執事・大学院生)、大川祈さん(同志社大学神学部生)、前回の関東キャラバンにも参加した桝田翔希さん(同志社大学神学部生)の4名。部落差別がなくなることを願い、解放運動への熱い思いを伝えるために、また九州教区の各地の教会・伝道所で取り組んでいる方々との出会い、さらに新たな出会いを求めて九州教区を駆け巡りました。
九州キリスト教会館北九州分室で行われた出発式で各隊員は決意表明をし、梅崎浩二九州教区議長から力強い励ましと祝福をいただき、九州教区の方々の熱い祈りをもってキャラバン隊は送り出されました。その後、北九州、大分、宮崎、鹿児島、奄美、熊本、長崎、佐賀、福岡、筑後と九州教区の全地区を巡って計12回の集会を行いました。各集会では、それぞれの隊員がメインスピーカーを交代で担当して部落差別と取り組む熱い思いを語りました。また、狭山事件のアピールや部落解放センターの紹介も行いました。全ての会場で歌を歌い、集会を盛り立てました。
期間中、日曜日を2回挟みましたが、隊員がそれぞれ4つの教会に別れて礼拝を行い、礼拝の中などで語る機会が与えられました。さらに福岡地区では部キ連九州の研修会にお招きいただいて集会を行い、福岡女学院中高、福岡女学院大学、西南学院高校ではそれぞれを隊員が分担してチャペルで語らせていただきました。筑後地区では「九州教区部落解放講座/新任教師オリエンテーション」に参加し、プログラムの中で「キャラバン大集合」を行いました。
また、コースの途中で奄美大島、徳之島、川内原発、佐世保軍港、長崎市内、KUSコイノニア・センター(小野一郎先生宅)、小郡市人権教育啓発センターでフィールドワークや研修を行いました。瀬戸内教会のかな保育園では子どもたちとの交わりも与えられました。キャラバンカーの走行距離は1708・6キロ。奄美地区へはキャラバンカーを預けての移動でしたので、全行程2500キロの大移動でした。各地の集会、大集合には300人以上の方々が駆けつけて下さいました。学校、主日礼拝などを考えるととても数え切れない方々との出会いが与えられました。
部落解放センターは4年前に四国教区キャラバン、2年前に関東教区キャラバンを実施しました。各教区で行うキャラバンはこれで3回目です。7月2日に久留米東町教会で「キャラバン大集合」を行い参加者約50名とインターネット生放送を観ていただいた約120名が「部落差別が無くなりますように、部落解放を教会伝道所の課題として取り組もう」と祈ることができました。
部落差別とは、生まれ、家柄、出身地、居住地、職業等によって人間を判断し、差別する問題です。この部落差別によって苦しむ人々は、その暮らす地域で差別に耐えている現状があります。今回、ある被差別部落が地域にある集会で、参加者が「教会にキャラバン隊が来るから、みんな来てほしい」と知らせたら「今さら部落差別問題を…」「そんなことをするから部落差別が残る」と言われたと聞きました。また集会参加者の中からも、いわゆる「寝た子を起こすな論」の意見が出された場面もありました。被差別部落の地域でもそうでない地域でも、長年の差別意識から「少し我慢すれば」や「声を発するから差別がおこる」などの黙認や容認が日常生活の中に根強いことを改めて考えさせられました。
「差別されている側」の声を発せないような状態が続く限りいつまでも部落差別がなくなりません。長年にわたる部落差別解消への取り組みや行政の区画整理・地名変更等により、見た目には部落差別の現象は減少したかもしれませんが、今だ部落差別はしっかり残っています。これからもこの答えを部落解放センターから強く発信し続けて行きます。
約21年前に行った「全国キャラバン」や四国教区キャラバン、関東教区キャラバンは、長年部落差別に取り組んできたベテランの先輩方が自らの体験を元にしたテーマで話す集会でした。今回はメンバー3人が20代の青年でしたし、私自身、隊員としては初参加ながら隊長としての参加でしたので、知識や経験が不足している部分をお互いにカバーしながら、メンバー全員が、自分たちが準備してきた言葉や歌で一生懸命出来るだけのことをやって「部落差別解消を訴え、あらゆる差別を訴える」アピールをしました。各地で多くの方々に助けられました。多くの励ましが与えられました。各地の集会へ何度も足を運んでくださった先輩隊員もありました。時には厳しい叱咤激励もいただきました。今後のキャラバンへの提案もいただきました。深く感謝いたします。
今回のキャラバンに対していただいた提案は深く受け止めて今後のキャラバンに、また隊員一人一人の今後の取り組みに活かしていくことが出来ればと思います。
多田玲一実行委員長をはじめ、実行委員会の方々、九州教区、各地区の方々、そして各地で多くの方々にお世話になりましたことを深く感謝いたします。
「キャラバングッズ(扇子・手ぬぐい)」の素晴らしいデザインを、九州教区事務所の青戸みぎわさんが作ってくださいました。深く感謝いたします。
(小林明報)