「アイヌ民族への差別発言に関する北海教区からの声明」
2021年3月13日
各位
日本基督教団北海教区総会議長 原和人
日本基督教団北海教区アイヌ民族情報センター主事 三浦忠雄
日本テレビ番組「スッキリ」におけるアイヌ民族への差別発言に関する声明
2021年3月12日に放送された日本テレビ番組「スッキリ」の中で、アイヌ民族の女性をテーマにしたドキュメンタリー作品が紹介されました。しかし、その際お笑い芸人によるジョークとして、到底許されない蔑視発言がありました。
私たち日本基督教団北海教区は、先住民族の有していた土地、歴史、言語、文化を収奪してきた私たちの歩みを省察し、今もなお奪われたままの先住民族の権利回復のために、差別撤廃のために働いております。そのための機能として、アイヌ民族情報センターを組織し、アイヌ民族をはじめ様々な先住民族との交流と支援、学習を通して、働いてまいりました。そうした中で、今回、全国放送を通して、差別発言が流布され、更なる差別が助長されることに危機感を抱いております。
そこで、今回の発言を通して何が問題であるかを検証し、ともに考えるべくこのような声明を発する次第です。
1.発言の内容について
今回の発言は、アイヌ民族を侮辱し、差別されるものとして用いられ、それを聞く人々が傷つけられるというものです。さらに、今後この言葉が多用され、更なる差別を生じさせることを懸念します。たとえ、差別する意図で用いられなかったとしても、そうした歴史があることに全く無知であることは問題です。加えて、このような発言が「笑い」の場面で用いられたことは大変残念です。
現在もなお、このような侮辱を受けている方々がいることを知るべきです。差別は、悪意(ヘイト)だけではなく、「無知」から起こる何気ない発言にも、現れることを自覚するべきです。
2.日本テレビによる謝罪について
番組による謝罪がありましたが「不適切な表現」であったという曖昧な言葉にとどまっています。この問題は、「不適切」どころか、アイヌ民族の心情を著しく傷つけるものであり、私たち、とりわけマジョリティである「和人」の差別性を大きく表したものです。不適切な表現というだけでは説明が十分ではなく、批判が起こったから謝罪したということに過ぎないと感じます。もし、一連の収録が担当プロデューサー、ディレクターによって監修がなされたのならば、このような発言を許すにいたってしまったことの自己検証がなされるべきです。また、この出来事によって、私たちの何が問われているのか検証すべきです。また、謝罪したことによってこの問題性が忘れ去られ、同じことが繰り返されることを危惧いたします。
3.この問題は私たち和人の問題
この発言の問題は、当該番組における発言者だけにあるものではありません。私たち和人がいかにアイヌ民族に対して無知であり、無意識のうちにアイヌ民族の方々を踏み躙っているのかという問題です。
2020年7月に民族共生象徴空間「ウポポイ」が開館し、伝統文化の発信という観光としての政策が展開されています。一つの側面としては喜ばしいことですが、一方で、先住民族として有していた権利(特にサケを獲る権利など)は奪われたままですし、研究目的で収集、盗掘されたアイヌ民族の遺骨返還訴訟についても、なんの謝罪もなされず、それらの問題と向き合う政策はなされていません。
現在この国を形成しているのは、「和人」だけではなく、多種多様なルーツを持っている人々です。アイヌ民族以外の人々にも、ヘイト、差別が繰り返しなされていることも加えておきたいと思います。この発言問題を機に、私たち和人の歩みを問い直し、本当に「共生」することは何なのか、差別のない世界を作るにはどうするのかを共に考える機会とすることを望み、また、日本テレビをはじめ、この国に住む私たちが差別に立ち向かう姿勢を示していくことを求め、この声明を発します。