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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

2016年 日本基督教団・在日大韓基督教会 平和メッセージ

2016年8月2日

2016年 日本基督教団・在日大韓基督教会 平和メッセージ

日本基督教団総会議長  石橋秀雄

在日大韓基督教会総会長 金 性 済

 

「はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。」(マタイによる福音書25章40節)

 

わたしたち日本基督教団と在日大韓基督教会は、アジア・太平洋戦争における罪責を神の前に想起し、近隣諸国への侵略と植民地化政策により多大な苦しみを与えたことを心からお詫びし反省しつつ、平和の主イエス・キリストによる和解と平和を祈り願います。そして、武力・戦争への道に対して明確に否を唱える平和の道と、平和と福祉を例外のない全ての人と分かち合う共生社会構築の道を模索してゆきます。弱者を切り捨てるのではなく、マイノリティの叫びの中にイエス・キリストが呼びかける声を聞かなければならないと確信します。

 

ヘイトスピーチのない平和と共生の社会を

日本社会ではこれまでも、朝鮮学校に通う女子生徒の制服が切り裂かれるなど、在日コリアンをはじめとするマイノリティに対する差別と暴力が繰り返されてきました。今日では、差別・排外主義的な主張を標榜する団体により人種的憎悪や民族差別を煽動するヘイトスピーチが公然と繰り広げられ、言葉によって恐怖と苦痛を与え続けています。このようなヘイトスピーチを規制する法律が今年5月に成立しましたが、禁止はせず罰則もなく、規制対象は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に限定され、アイヌや沖縄・被差別部落などのマイノリティへの差別的言動は規制対象となっていないなど、課題も少なくありません。このようなヘイトの現象が2009年以来、執拗に持続することは、現代日本の政治が個人の基本的人権を保障し戦争放棄を誓う憲法を揺るがそうとする極右的な勢力に突き動かされていることと無関係ではありません。在日大韓基督教会は、2015年11月に日本基督教団をはじめとする国内と世界の諸教会と共に第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議を開催し、日本における人種差別の撤廃に向けて、日本と世界のキリスト者が祈りと力を合わせていくことを確認し、マイノリティセンターの設立(2017年4月予定)を決めました。わたしたち日本基督教団と在日大韓基督教会は、ヘイトの中に潜む敵意に対して、歓待と和解の福音信仰に堅く立ち、共生の平和を目指すために世に遣わされ働くことを、現代を生きるキリスト者に託された福音宣教の使命として、ヘイトスピーチの課題に取り組み、この地上に平和と共生の社会の実現を求めていくことを決意します。

 

原子力発電所のない平和で安全な社会を

東日本大震災から5年が過ぎた今もなお、東京電力福島第一原子力発電所の事故が引き起こした深刻な問題はいまだ解決されておらず、震災関連死者数も増加しています。そして、いまだ10万人に近い人たちが困難な避難生活を余儀なくされています。それだけでなく、弱者切り捨てともいわれる避難生活が続く中で、地域の間や避難者と受け入れ者の間に、そして避難生活者同士の間にも葛藤や分断が生じ、人間の尊厳が大きく傷つけられています。

そのような分断状況があるにもかかわらず、まるで原発事故と避難者の存在など無視するかのように、九州電力は川内原子力発電所1号機と2号機を再稼働しました。熊本大地震の際、原発事故を恐れた多くの市民が稼働の一時停止を求めましたが、その声は聞き入れられず、何もなかったかのように稼働が続けられています。また、原子力規制委員会は、40年が経過した関西電力高浜原発1、2号機について、最長20年にわたる運転期間の延長を許可しました。わたしたち日本基督教団と在日大韓基督教会は、再稼働に反対する国民の声を無視して原子力発電所の再稼働を進めていることに強く抗議します。それと共に、日本政府に対して、原子力発電所の稼働を停止し、すみやかに廃炉に向けての処置を取ることを求めます。そして、原子力に依存しないエネルギー政策への転換の取り組みを求める働きかけを継続してまいります。

 

基地のない平和で非暴力な社会を

わたしたち日本基督教団と在日大韓基督教会は、昨年9月に参院本会議で可決された安全保障関連法は憲法違反であり、同法を廃止して立憲主義に立ち戻ることを日本政府に対して強く求めてまいりました。

それに対し、安倍政権は、熊本地震に便乗してオスプレイを物資運搬に使い、緊急事態条項追加の必要性を主張しています。また、安倍政権の支持母体である日本会議や神社本庁は、「憲法改正に賛同する署名」を初詣客などに広くよびかけ、サミットを伊勢志摩で開催して各国首脳を伊勢神宮に「訪問」させるなど、国家神道の復活と憲法の改悪をもくろんでいます。

このような状況の中で、いま沖縄は苦悶しています。6月19日には、元米海兵隊員に殺害された女性を追悼する県民大会が開かれ、6万5000人の参加者は、基地のない沖縄を望み、「県民の怒りと悲しみは限界を超えた」と悲痛な叫び声をあげました。教会は、この叫びの中にイエス・キリストが呼びかける声を聞かなければなりません。

わたしたち日本基督教団と在日大韓基督教会は、政治の責任を担っておられる方たちが、憲法を守り、この世界における真実の平和の実現にこそ寄与する政治を行うことを強く求めます。また、沖縄の怒りと悲しみの声を聞きつつ、安全保障関連法が廃止されるために、今後も祈り続け、声を上げてまいります。そして、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」(憲法第9条)、武力の行使によらない平和の実現のために力を尽くします。

世界の全ての人々の上に、平和の主イエス・キリストの恵みと導きを祈ります。

 

2016年8月

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