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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【5000号】教区議長コラム(3面)

2023年7月8日

言葉を透かせて気づかせて

京都教区議長
今井牧夫

 聖書解釈で最近気づいて、考えたことがある。
 ルカ福音書21章、神殿の賽銭箱に生活費全額を献げた貧しいやもめの話。この話を私は子どものときから読んできた。そして、普通の人はまねできない「素晴らしい信仰」の話だと理解してきた。
 しかし、最近の大きな社会問題である宗教の問題、様々に論じられているが、極端な多額献金の宗教方策によって信徒の家庭関係や家族の学校生活などが破綻する問題が、この箇所を読みつつ脳裏をかすめたとき、それまでと全く別のことを感じてしまった。
 この話は、その後に続く神殿崩壊予告の話に強く関連している。貧者が最後の希望として自らの全てを献金した神殿が、その期待を果たせず崩壊する将来を示しつつ、貧者が献げる献金の意味と、巨大で壮麗な神殿の意味が対比されているのだと思えてくる。
 イエス様はこの貧者が「だれよりもたくさん入れた」と(献金額の収入比率としての)事実そのままを表現された。
 これは褒め言葉だろうか。それとも、貧者がなけなしの生活費をすべて神殿に献げる社会の現実をどう思うか、ご自身の言葉を聴く者たちに問うておられるのだろうか。
 貧者が生活費をすべて献げる「素晴らしい信仰」の背景には、そうまでせざるを得ない現実生活の深刻な問題がありはしないか。この人は、本当はそんなことをしなくて済む暮らしをしたかったのではないだろうか。最後の希望を二枚の銅貨に託することで。
 私は今、現代の問題を聖書に重ねて何かを主張したいのではない。聖書が現代の問題の深い意味を、言葉を透かせて気づかせてくださる、そのことに心を打たれている。だから言葉の前で一人で、また皆様と共に耳を澄ませたい。
 そうしたある日、私は教区総会議長に三選されていた。

 

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