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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4715号】全員がそれぞれに伝道の幻を語る

2011年1月19日

 

2日間にわたり5時間以上を割き

伝道方策検討委員会設置を巡る審議の中で、小林貞夫常議員が全常議員の発言を求める議事進行動議を出した。ここから、5時間以上にも及び、議事の大半を占めることになった伝道の幻が語られることとなった。

発言は座席の順番に行われた。最初に小橋孝一常議員が次のように思いを述べ、結果的に、この後の発言に方向付けをした格好となった。

「日本の社会構造の変化だけを伝道不振の理由にはできない。伝道の進展している教派もある。伝道方策をいろいろ言う前に、伝道基礎理論を確立せねばならない。1964年の宣教基礎理論が、今から見れば問題であった。伝道を教会の利己主義と絡めて否定的に理解している。伝道方策の根本に伝道基礎理論を確立すべき。教団が世に仕える第一の方法は伝道することだ」。

長山信夫常議員は、「宣教の課題は、福音の根幹から出てこなければならない。宣教の課題が『何々しなければならない』という律法の響きになり、各教会・信徒を疲弊させてはいないか。『大伝道命令』が根本。各教区も宣教基本方針を見直すべき」と訴えた。

寺岡恭仁子常議員は、四国教会の現状を説明し、個々の教会が孤独に陥らないために教団的視点が必要であることを説いた。

大村栄常議員は、西東京教区の立川開拓伝道を例に上げ、「機構改正以前の『方式伝道』ができるような、教団の態勢への変革」を主張した。

島田勝彦常議員は、「教団の抜本的な体質改善、教団の顔の見える関係」を唱え、「委員会をやっていれば活動しているつもりになるのではないか」と指摘した。

小林貞夫常議員は、伝道150年の委員長を努めた体験から、「政治的立場を異にする人にも届く言葉を語るのが牧師であり、社会の現実によって破れを抱いた双方の立場の人間が教会へ来る、そこに福音が語られなければならない」と述べた。

江本義一常議員は、「『教会の体質改善』という名の社会運動をして、教会は拡がらなかった。方策でどうなるものでもない」と述べ、「教団紛争と教勢低下の関係」、「他教派や韓国の教会に比較して、何故教団だけが低迷しているのか」を問うた。

松尾亨常議員は、「伝道の熱意に燃えた人を育成する神学校の伝道者養成、信徒が牧師と一緒に伝道するための理論武装、教団から教区へ、教区から各個教会へ生かされるような取り組みが必要」と主張し、また「伝道は結局一人ひとりが喜びを伝えること」と述べた。

森里信生常議員は、「教会の使命は伝道。教会は、この世の中に対して礼拝をしている。伝道は礼拝においてなされる」と、「福音を楽しく語る教会、伝道の信頼関係、協力関係の築ける教団であってほしい」と訴えた。

佐久間文雄常議員は、「無縁社会への伝道の発想」を提案し、また「伝道のためにこそ、(災害援助献金の実績である)15千万円の献金を集めて、教会を建てる」べきと述べた。

深谷春男常議員は、「ホーリネスの伝統には義認と聖化がある」、「伝道は十字架の贖いに始まり終わる。ここをずらしてしまったら、教会は教会でなくなる」とし、「教会と国家の問題も重要だが、十字架の贖いに徹する」とした。

篠浦千史常議員は、四国教区の実情から、「キャリアのある牧師が、高齢化の進んだ教会へ赴くなど、任地について教団のスケールで方策を考えるべき」と唱えた。

高橋潤常議員は、「1700余の教会に、伝道に燃える教団であることを伝える。分析し、危機感を共有する」とし、伝道熱意に地域間格差がある中での協力体制構築を提案した。

鈴木功男常議員は、一般の出版社がキリスト教の書籍を多く売り上げているという事実を例に上げ、「30人の現住陪餐会員で一人の受洗者が生み出されれば」と、具体的数字を上げて伝道目標を述べた。

古屋治雄常議員は、「何か別の理由を上げて、仕方がないというのではなく、それぞれのレベル、それぞれの位置で伝道を考える必要」があるとし、「具体的なことと、伝道基礎理論を考えていく」ことを「一緒に進めるべき」とした。

岡村恒常議員は、「全体教会の枝である自覚、受洗者の喜びを教団全体の喜びとして分かち合うこと。無牧教会を、教会が協力して支えていけるか」を課題に上げ、「聖霊信仰、復活信仰、それを共有できる部分はまだあるだろう」と述べた。

河田直子常議員は、「教会にしかない『十字架による罪の贖い』による救い」を強調し、「信仰の一致が見られないところで、伝道協力はなし得ない」と述べた。

大杉弘常議員は、「若草教会の散雪用水路が雪に埋もれた時、それを片付けたことから自分の奉仕と教会生活は始まった」と、体験から「教団は口を出すけど、作業はしない。方策よりも行動が先だ」と「理論の検討は他の部分に任せて、伝道の実施について取り組んでいく組織であってほしい」と要望した。

遠藤道雄常議員は、「各個教会に向かってメッセージを出すのが教団である。日本の現況や世代間格差を分析し、喜びを与える説教を語れるように、牧師や役員へ発信してほしい」と述べた。

高橋和人常議員は、「伝道方策をペーパーで出しても意味がない」とし、「伝道力を出し得る、財源・組織へと教団を改革すること、人材を育成すること」の必要を強調、また「宣教命令は全世界対象であり、成果の上がりそうな所だけに伝道するのではない。教団総会の規模を縮小してでも、伝道の財源を出したい」、更に東北教区の状況を説明し、「一言に教区間格差と片付けられない」と述べた。

2日目も、このセッションは延長された。

北紀吉常議員は、「教団がきちっとした説教者、福音を語る者を立てる。財政的に厳しい教会が伝道礼拝を行いたいとき、それを支える。議長が先頭に立って、教会が元気になる会を。付帯施設、幼稚園等でも福音を求める人は大勢いる。子育て世代の母親などが対象となる。信徒は御言葉を聞く機会を多く持ってほしい。こまめに集会をする。伝道は具体的なことをすることだ」と意見を述べた。

岡田義信常議員は、「総論として伝道基本方針の作成、紛争で見失われた伝道の中心を回復させる。各論としては、教会学校と青年伝道、教区ともどもに伝道支援体制を構築する、教区を超える伝道協力を教団が支援する、伝道者養成の神学校と教団との関係、信仰告白の一致と連携強化」を上げた。

望月克仁常議員は、「教師の年齢構成、東京神学大の財政等から近い将来に必ず起きる教師不足を考えなければならない」とし、「東神大の財政を信徒一人ひとりが支える決心を」と、伝道者の育成を訴えた。

藤掛順一常議員は、「伝道協力にどうしても必要なのは信仰の一致。教区活動連帯金が破綻したのは、信仰の一致がなかったからだ。信仰の一致は画一化ではない、多くの教派の合同教会であり、その相違を認め合いながら信仰告白で一致する」と述べ、「本議事における各常議員の発言を冊子にして、各教会へ発送したらよい」と提案した。

長崎哲夫常議員は、「伝道『方策』という言葉の使い方への違和感を最初にもった。本気でやるなら、全教団的・全教区的に盛り上がるために、教団史(教団の創立時の確認)の作業を並行して行うべき」と提唱し、実際に見聞きした諸伝道諸活動の具体例を上げて説いた。

また、「各個教会主義は独善という意味ではない。組合教会の性格は、フォーサイスなどを頂点とする聖書主義である」と主張し、日本の伝道史の中から多様な伝道戦略を紹介し、これらのことを踏まえた伝道方策でなくてはならないと主張した。

川原正言常議員は、30の大学がある西東京の八王子・多摩地区を例に、「全国から送られてくる学生に対して、地方と都会の伝道協力を、教団で出来るだけの知恵を結集すること」を訴え、「若い人にも届く言葉、韓国の中高生との交流、伝道の対象としての中高年」に触れた。

髙橋常議員は、「①礼拝より礼拝へ、②牧師と共に最前線で伝道、③教団が教師を立てその生活を守る、④教区は教団と共に教会を立てそれを守る、⑤信徒と教師が手を携えて伝道のムーブメント」と5つの課題を上げ、更に教団に伝道局を置く、僻地に派遣する教師の謝議についての配慮、年金局を守るなど具体的に提案した。

雲然俊美書記は「教団が全体教会としての伝道協力の実を結ぶことを願う。実情を知り祈り合っていく。奥羽の地での伝道は困難だが、同時に喜びである」と述べた。

岡本知之副議長は、「伝道が方策で前進するのか」と疑問を投げかけたが、一方で「戦略的に伝道を。教団の事業仕分けをしなければならない。地方の伝道をどこまでも支える。福音信仰に立った伝道者養成を整える」と所感を述べた。

石橋秀雄議長は、「熱く語り、聞き合えたことに感謝する」と感想を述べ、「諸教会でさらに熱く語られる教師・信徒と手を携えたい。冊子化もぜひ信徒常議員の声を中心に。伝道基礎理論について、宣研の取り組みを」と語った。

この後、要請陪席の諸委員長、教区議長も同様に伝道についての所感を語った。詳細を報告するには紙面に余裕がないが、それぞれの立場・状況を説明し、制約が多い中で、今も精一杯伝道していることを訴える議長が多かった。伝道への真摯さが伝わってきた。

全教団的伝道方策が全面に出ることで、歴史的必然を負ってきた教区や地域の独自の伝道が損なわれるのではないかという危惧の声も述べられた。

(新報編集部報)

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