教団総会ごとに行われる部落解放劇が50分ほどの上演時間で行われた。
香澄さんと遙君、二人の教会青年が「部落解放青年ゼミナール」実行委員会に参加して劇が進む。遙君は部落差別問題について詳しくないが、香澄さんに誘われてはじめて実行委員会に参加する。委員会では、武牧師に導かれながら、今年の教団総会に上演する解放劇についての話し合いがはじまる。差別問題をめぐる経験を寸劇の仕方で披露して解放劇に仕立てゆく。焼肉パーティーでの精肉業者の話。被差別部落に建つ学校に遣わされた教師の話。同和地区近くの極端に安い土地の売買を巡る話。演じられる寸劇と幕間に入れられた東谷誠センター運営委員長のワンポイントレッスンで差別問題の理解を深める工夫をする。
「寝た子を起こすな」と言うことで問題を避け、そのままにして忘れるのを待つことや、「部落分散論」と言われることによって、被差別部落を出て他のところに住まえばわからなくなる、といったことでは差別は無くならないことを指摘する。
部落差別問題に疎かった遙君も、他の実行委員たちと一緒に劇を準備してゆく中で問題の理解を深めてゆく。最後に「さようなら無関心—関係者でいこう!」という今年の解放劇の題が決まる。
青年たちは、信じることだけでは差別は無くならない、と信仰と差別問題に悩む。しかし、確かに無くならないかもしれないが、信じることで問題に取り組むための力を持つことができるはずだ、と道を見出してゆく。「課題から信仰へ」ではなく、「信仰から課題へ」という信仰の秩序を教会の青年たちが発見することが印象に残った。劇中の青年たちにも、観劇する者たちにも差別問題の現実を知ってもらうため、高いハードルを下げようという工夫がいくつも見られた。
また台本を持った半朗読劇で長いせりふが多かったが、はっきりと聞こえ理解しやすく、効果的なBGMと相まって見る者を劇に引き込む力があった。 (新報編集部報)