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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4576号】教務教師 神学教師からの声

2005年4月16日

生きている伝統
中川 寛
(聖学院中高 宗教主任)

聖学院は来年創立百周年を迎える。一九〇六年米国ディサイプルス派宣教師H・H・ガイ博士と初代校長石川角次郎によって駒込の地に設立された。それに先立ち一九〇三年、ガイ博士は聖学院神学校を創設し、ディサイプルスの「伝道者養成」に着手している。聖学院は伝道者養成の神学校としてその礎を持っている。今日その神学校は青山学院神学部から東京神学大学に合併している。現在聖学院は六年一貫教育を施す千百余名の男子中高である。一九九九年に校舎改築を行ない、東京北区駒込の地に十字架の高くそびえる石川角次郎初代校長を記念するベルタワーをもってキリスト教学校としてその存在を明らかにしている。毎朝八時十五分には三つの鐘が鳴り渡り、四方数キロに及ぶ範囲で都会の喧騒を和ませている。
聖学院のキリスト教精神を明確化する意味で『光と水と風のシンフォニー』との校舎建築のコンセプトを位置づけた。当初これは何を意味するのかと卒業生からもいぶかしがられたが、言うまでもなく神=光、キリスト=水、聖霊=風である。聖なる三位一体の神を現すシンボルとして校舎の中央に光の広場、噴水と川に流れる泉、風の吹く抜ける一階空間を設けた。さらにこの構造は十字架のそびえる石川ベルタワーによって調和と均整が保たれている。生徒たちは日々この聖なる概念を体得することとなる。
聖学院キリスト教教育の百年の歴史を一言で明言することはできない。ある時は戦争のゆえに屈辱の日々を余儀なくされ、またある時にはそのキリスト教的伝統の豊かさを自信を持って繁栄することも出来た。しかし聖学院は使徒パウロの『御言を宣べ伝えなさい。時が良くても悪くても、それを励み、あくまでも寛容な心でよく教えて、責め、戒め、勧めなさい。』(Ⅱテモテ4章2節)との言葉に勇気付けられ、福音を証する姿勢を貫いていることである。
聖学院九十年史には次のような記録が記載されている。
「世界的大伝道者スタンレー・ジョウンズ博士を迎えて特別宗教講演が、昭和二十八年(一九五三年)四月二十五日(土)に行われた。博士は、流暢なる語調に熱をこめて平易に説き、最後にキリスト教信仰の問題に触れて若者の魂に訴えた。宗教講演会にふさわしい引き締まった雰囲気の中で講演会が行われ、生徒に深い感銘を与え、決断を促されて入信を決心する者が多く出た。洗礼を希望する者九名、求道を決心するもの二百三名、既に信仰に入った者で再決心をする者三十九名合計二百五十一名であった。」
これは驚きの記事である。聖学院キリスト教のリバイバルである。事実この時代に在学した卒業生の中にキリスト教会で活躍する牧師方がおられる。この記事はキリスト教教育を担う教師を勇気付ける。今年は卒業生の中に十三名のクリスチャンがいた。またその中から二名が神学校へ進み、献身を希望している。聖学院の伝統が今日も生きている証である。
キリスト教教育とは魂への開花を促す熱き情熱に裏打ちされた教育である。使徒パウロは「キリストは律法の終わりとなられた」(ロマ書10章4節)と語る。その意味するところは「キリストはノモス(律法=人間の価値基準)のテロス(ターミナル=終着目標)である」という意味である。ここに人を開眼させる福音のダイナミズムがある。聖学院は伝統的にこれを語り続けてきた。これからも語り続ける。この言葉を通して新しい人間の生き方を考える。新しい風と共に新しい人間として、新しいキリストの香りをはなって生きつづける。

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