「先生、牧師さんになるにはどうしたらよいですか」と聞かれた。刑務所で教誨を行っているときである。
月に一度、刑務所に出かけ、キリスト教を希望する皆さんと聖書を読むひとときを持っている。まず三〇分間は聖書を輪読し、簡単な説明を行う。その後の三〇分は懇談の時としている。読んだ聖書について、キリスト教全般について等の質問がある。牧師への道の質問は、何よりも教会に行き、信仰生活を始めることであると答えたが、教誨を受ける皆さんにとって、そんなに牧師の姿がよいのであろうか。教誨の時間ではなるべくお話しができるようにしている。服役中私語は禁じられているし、ましてや歌などうたえない。讃美歌は間違えても良いから大きな声で歌うように促している。「今月末に出所します。今まで良いお話をありがとうございました」と丁寧に礼を述べる人もいる。社会復帰し、主の道を歩むことを祈る。
この刑務所は十人の教誨師がいるが、神父、宮司、牧師の他はみな僧侶である。刑務所におけるキリスト教の光を消さないようにしたい。キリスト教の教誨を心待ちにしている人のためにも。教団には、約九〇人の教誨師がいる。連絡しあい、研修をしている。教誨師の働きを覚えたい。
自分の赤ちゃんを殺してしまったと言い、泣き続ける女性の服役者は、「いつくしみふかき」の讃美歌に全身を向けているのであった。
(教団総会書記 鈴木伸治)