地域の幼子のために
浦和母の会幼稚園は、浦和駅から徒歩で一〇分ほどの住宅街に溶け込むように建っている。園舎は、まったく幼稚園の建物らしくなく、大きな住宅と言った感じである。
この園舎には、真崎さんの幼稚園についての考え方が具体的に表現されている。一つは、幼稚園教育は小学校の単なる準備教育ではなく、学校を幼児のために縮小したものでもないということ。家庭が幼児の人間形成に重要なように、幼稚園も家庭生活、家庭教育の延長でありたいし、家庭と協力し幼児の成長に尽くしたいと願う。もう一つは、この幼稚園の始まりが個人や学校、教会の志によるのではなく、地域住民が自分たちの子供への教育を願い、これによって始められたことがある。この願いにキリスト者たちが協力した。終戦直後のことである。
一つ屋根の下にいるような心地よさ、地域から浮き上がることのない佇まいは、こんな願い、始まりの表れである。
真崎さんは、大学進学の折にはっきりとキリスト教保育を志した。医療関係の道も考えたがその道は開かれなかった。ただ、いずれにしても人の役に立つ仕事に就きたいと早くから思っていた。一時、保育の仕事から退いたこともあったが、それ以外は、これまで一貫してキリスト教保育に関係してきた。
キリスト教との出会いは、幼いときにあった。幼くして父を亡くしたため母方の祖父母に育てられた。その中で近所の人に誘われて教会に。中学一年生のときに受洗。初めて礼拝に出席してから高校卒業まで数えるほどしか礼拝を休まなかった。近所の子を礼拝に誘うのが好きだった。教会の中で良きキリスト者たちに囲まれて過ごしたことが人の役に立つ仕事に就きたいとの思いの土壌となった。
地域の思いによって建てられた幼稚園。創立六〇周年を迎える。延長保育の実施、未就学児の受入れ等を通しても地域に仕えてゆきたいと願っている。