【4783号】人ひととき 伊藤 倭(すなお)さん わが世に  あらん限りは

中国を経由してインドから伝わった〈ろうけつ〉(臈纈。または〝ろうけち〟)は日本で最も古い染法といわれる。正倉院の宝庫にもこの手法で染められた織物が収められているという。
伊藤さんがろうけつと出会ったのは高校生の頃。「家から一番近かった」高校に染物科があり、絵を描くような感覚でできることに興味を抱いた。
小さい頃から絵を描くのが大好きだった。病弱だったため自然と家にいることが多かったからである。
教会との出会いは4歳か5歳の頃、とにかく終戦直後のことと本人は記憶している。母に連れられ近くに建てられた教会へと足を運んだ。〈カマボコ兵舎〉を利用した会堂が今も強く印象に残る。
病気で学校は休んでも教会の学校は休まなかった。「学年ごとに歌う讃美歌が決められていたのよ」と少し悔しそうに思い出すが、とにかく毎週楽しかった。
バプテスマを受けたのは15歳の時。牧師や母に勧められたのではない。むしろ母は信仰のことに関して何も言わなかった。本人に聞くと「一日生きるのが精一杯だったから」。腹膜炎にかかり死線をさまようなど、病気のことが常に心にあったのだという。家族の誰も彼女が20歳まで生きられるとは思っていなかったらしい。
「だから自分にできるだけのことを」と考えるようになった。教会学校の奉仕、宮古島に住む友を訪ねた沖縄への旅、YWCAでの交わり…。しかし神は想像もつかないほど多くの時、人との出会いを与えてくださった。
最後に50年以上も共に歩んだろうけつのことを聞いてみた。〈フナ釣り〉によく例えられるらしい。「ここに戻るってことかしらね」と話す今、礼拝に足繁く通っている。本当は神がこの人の上に何かを描いてくださったのだと思う。

ろうけつ作家、福岡南教会員。

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