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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【5044号】東日本大震災から15年 放射能問題支援対策室いずみ(2面)

2026年3月28日

東日本大震災から15年

放射能問題支援対策室いずみ 会津放射能情報センター 東北ヘルプ

神に託された世界をより良く次世代に繋いでいくために
原発事故による放射能被害の現状とこれから

 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故から15年を迎えようとしている2月10日、東北教区センターエマオで、東北教区放射能問題支援対策室いずみ・小林休運営委員長、会津放射能情報センター・片岡輝美代表、仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク・東北ヘルプ・川上直哉代表から、放射能被害の現状、各団体の活動と課題を聞いた。

放射能被害状況

 2011年10月、福島県は、「県民健康調査」として、事故当時18歳以下の県民38万人を対象に「甲状腺検査」を始め、2025年6月30日現在、361人に甲状腺がんが見つかり、内303人が手術をしている。この結果については、一定程度集団検診によるスクリーニング効果も含まれている可能性が指摘されているものの、甲状腺がん発症に地域差があり、放射線が高い地域ほど、高い発症が見られ、原発事故によって放出された放射線の影響を受けていると指摘されている。

 また、1回目検査で、2011年当時0〜18歳だった30万人から見つかった甲状腺がん患者115人全員が被ばくで発症したとする報告もあり、これは100万人あたり383人となる。この結果は、がん統計の100万人あたり2人に比して200倍近い数となる。一方、事故とは無関係の通常発症率を求めた宗川吉汪教授は、1回目検査の患者115人の内、事故前発症は47人、事故後通常発症20人、被ばく発症48人とし、事故後の被ばく発症は通常発症の2.4倍とした。

「仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク・東北ヘルプ」の働き

 震災直後、教会が教派を超え大学やYMCA等と協力して支援に取り組むため3月18日に事務所を開設。WCC(世界教会協議会)やACT(アクトアライアンス)あるいはJEA(日本福音同盟)等による支援の受け皿になった。放射能計測所を仙台、いわき、郡山、福島に設置。計測所を窓口にして、震災と向き合っている人と出会うことを目標にした。

 また、UMC(合同メソジスト教会)から送られた3000万円を原資に、短期保養の交通費を支援。支援した方と面談し、2016年までに208世帯の方から聞き取りを行い、不安を抱きながら子育てに励む親たちの声をまとめた。

 現在は、教団の常磐教会の中にある計測所で、「チームママベク」という母親たちのグループの活動を支援している。土壌の汚染を計測し、ホットスポットが見つかった場合は、安全対策を行政に求めている。

 2025年9月にも2000〜3000㏃/㎏、最も大きくて5000㏃/㎏の放射能が公園で確認されている。日本では、国が指定廃棄物として処理をする基準は8000㏃/㎏以上であるが、この基準はチェルノブイリで住民の強制退去地域となる520000㏃/㎡と同程度。2000〜3000㏃/㎏の数値は、ロシアでは、「放射線被害対策医療措置、住民の生活レベル向上のための環境保全・精神ケアサポートが実施される」べき状況だが、空間線量が低いことを理由に、なかなか動いてもらえない現実があるという。

 川上代表は現在、超教派の交わりが続いていることを踏まえ、「ふくしまYMCA」を立ち上げるヴィジョンを掲げ、原発事故が起こった3月15日には、福島市内の諸教会に呼びかけて福島教会で祈祷会、交流会の開催を計画している。

「東北教区放射能問題支援対策室いずみ」の働き

 東北教区の働きとして、2013年から活動を開始。「保養プログラム」、「甲状腺検査」、「傾聴と訪問」を主な活動として来た。

 甲状腺検査は、国がカバーしていない宮城県を中心に実施し、昨年の2月で100回を迎えた。2025年3月までの累計で、4370人に検査を行い、C判定(直ちに二次検査を要する)は0人、B判定(5.1㎜以上の結節、20.1㎜以上ののう胞を認め、二次検査をすすめる)が83人となっている。低線量地域であっても長期的に晒されることで人体に影響が出る可能性もあり、長期的視点を持って活動を積み重ねて行くことの大切さを受け止めて励んでいる。

 小林運営委員長は、帰宅困難地域に指定されている双葉町の自宅に一時帰宅したTさんに同行した時の様子を動画と共に紹介してくれた。空間線量10ミリシーベルト程で、家に足を踏み入れると物が散乱し、洗濯物も干したままという震災直後の状態が残る。Tさんは、「津波で流された方が良かった」と本音を漏らす。「家に帰る度に、『何故、このようなことになってしまったのか』という思いが怒りと共によみがえる」と言う。アメリカの心理学者ポーリン・ボス博士が「あいまいな喪失」と呼んだ、「はっきりしないまま残り、解決することも、決着を見ることも不可能な喪失体験」に苦しむ人々の心の復興のために寄り添うことも課題だという。

「会津放射能情報センター」の働き

 震災直後、事故被害の隠蔽と過小評価を予想した「九条の会」コアメンバーが5月、放射能から子どものいのちを守る活動を開始。7月には広く会員を募り運営する情報センターを設立。その頃ドイツEMS(福音連帯宣教会)の訪問を受け、ガイガーカウンターが提供された。また、10月には同団体の献金により食品測定器を購入し、測定を開始した。

 事故直後から、国際的な原発を推進する機関に属する科学者は「このくらいの事故は問題ない」と発言。これに対して混乱していた母親たちは、大阪教区から派遣されたキリスト者の山﨑知行医師から被ばく防護の重要性を繰り返し学んだ。

 2012年から12年間、新潟教会の支援を受け保養施設「にいがたはうす」を運営。春・夏休みには神戸や北海道の教会で保養プログラムを行った。現在は定期的に講演会を開催し、「子ども脱被ばく裁判」の事務局を担い、「宗教者が核燃料サイクル事業廃止を求める裁判」に参加する等、権利回復を求める活動に加わる。

 福島から遠隔の地域の土壌測定にも取り組んでいる。これは311以前のデータが分からず数値の判断に苦労した経験から、近隣原発で事故が起きた際、再び同じ地点の土壌を測定し、避難や被ばく防護の判断に役立ててもらうことを目的としている。

今後の活動の展望

 震災から15年が経った現状について、「廃炉作業の困難さや被害者の苦悩を置き去りにしてまるで原発事故が終わったかのように再稼働を強行する国の有り様を強く憂慮している」と3団体の代表者は述べる。川上代表は「風化という風評被害」が酷くなっていると述べ、また小林委員長は「東北教区総会では毎年のように、甲状腺検査について心配するような結果ではないとする趣旨の事実を捻じ曲げる意見がある」と述べた。

 また福島県浜通りでは技術革新を目指す国家プロジェクトとして工場や研究施設の誘致が進められていること、大熊町では保育園から中学校まで一体化した学園が建てられ新しい家族が移り住んでいる実態が紹介され「煌びやかな未来構想が示されるほど原発事故への怒りや悲しみを口にしづらくなる」と指摘する。

 片岡氏は、放射能の被害は、目に見えず、すぐに出て来るものではないので、事故の責任も有耶無耶にされている。だからこそ事実を伝え続ける必要があると指摘。「神に託された世界をより良く次世代に繋いでいくために、自ら調べ、学ぶ中から神に最も喜ばれる生き方を選び取っていきたい」と語る。

 小林氏は、時間と共に風化することは避けられないが故に、意識的に関心を持って行くことが大切であると述べ、「報告に目を通す等、些細なことでも大事にして覚え続けて欲しい」と語る。

 川上氏は、東日本大震災は、関連死と認められなくとも「遠因死」に該当するものは甚大になることを指摘し、事故で喪われた命が、間違いなく神さまの祝福の内にあったということを証することは教会の仕事であることに触れ、「福島の教会に来て共に祈り、礼拝を捧げて欲しい」と語る。

(嶋田恵悟報)

 

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