【声明文】
内閣総理大臣 石破 茂 様
防衛大臣 中谷 元 様
沖縄防衛局長 伊藤 晋哉 様
第 70 回日本基督教団大阪教区総会
「暴力に依存するな。搾取を空しく誇るな。力が力を生むことに心を奪われるな。」(聖書:詩編 62 編 11 節)
現在、日米両政府が防衛計画に基づいて、沖縄、琉球弧の島々で基地建設を推し進めています。「台湾有事」を想定し、「南西地域の強化」を理由にしているものですが、そのため沖縄、琉球弧の基地負担は過重なものとなっています。
辺野古の軟弱地盤工事が始まって1年が過ぎました。そもそも辺野古の新基地建設計画は普天間返還のためだったはずです。しかし今となっては辺野古に新しく基地が建設されたとしても、普天間が返還されるかは不透明な状況です。
国際情勢に目を向けると、アメリカでは第2期トランプ政権が始まり、グリーンランド取得、カナダ併合、ガザ住民の強制移住など、大統領の発言が世界に混乱をもたらしています。2025年3月、アメリカの国防次官候補(当時)のコルビー氏は日本の防衛費をGDPの3%にするよう主張したこともニュースとなり、国民の知るところとなりました。このように他国への干渉を強める国が、すでに不平等な日米地位協定を結んでいる日本に対して、要求やその支配を弱めるとは到底思えません。
また目まぐるしく変わる情勢の中で、早くて2033年に完成すると言われている基地は必要ないでしょう。もとよりマヨネーズ並の軟弱地盤と言われている大浦湾の海底、水深約90mの深さを掘る技術は日本にはなく、完成は不可能だとも指摘されています。従って沖縄県はすでに2019年の県民投票で反対の意思を示しています。この民意を無視した工事の強行が自然を破壊し、人間関係を破壊し続けています。事実、国は公有水面埋め立て承認の権限を代執行という形で沖縄県から奪い、信頼関係を壊しました。この政府の強行によって損なわれたのは、沖縄県のみならず国内すべての地方自治体との信頼関係です。
アメリカ政府が他国を力によって支配しようとするように、日本政府は主従関係ではないはずの地方自治体を力によって支配しています。
この力の支配の肯定は、在日米軍が沖縄で起こす犯罪にも見ることができます。2023年12月24日には嘉手納基地所属の米兵が少女を暴行しました。この事件は翌年3月27日付で起訴され、日本政府も把握していたはずなのに6月25日まで沖縄県に知らせませんでした。
国が代執行を行ったのが12月28日、岸田首相(当時)のアメリカ訪問が4月8日、沖縄県議選が6月16 日、沖縄慰霊の日が6月23日と、時系列で並べてみると隠蔽したい政治的思惑が見えてきます。
このようにして少女は事件後も、一番怒りの声を上げて欲しい日本政府に半年もの間隠され続け、さらに深く傷つけられたのです。国民の生命と財産を守ることを規定している日本国憲法に違反しています。この政府が沖縄、琉球弧に自衛隊基地を増設して、ミサイル配備までして守りたいものとは一体何なのでしょうか。
この軍事要塞化を進めるに当たり、国は近隣諸国の脅威を理由としていますが、そもそも近隣諸国を脅威に感じるのは、近隣諸国が日本、またその背後にあるアメリカを脅威に感じているからでしょう。2024年防衛白書には中国の抑止力の確保や、朝鮮民主主義人民共和国が米国を脅威に感じていることによる軍事強化、ロシアが米国とのバランスをとるための補強などの理由が脅威の要因として述べられていましたが、そうであるならばより一層の強化、軍事基地要塞化はいたずらに緊張を高めることになります。
キリストの平和を求める私たちは、暴力に依存する虚構の平和は求めません。世界中が力による支配から解放されることを求め、平和を求める人々と祈りを合わせるとともに、沖縄、琉球弧の軍事要塞化に強く反対いたします。
第70回日本基督教団大阪教区総会 沖縄、琉球弧の軍事要塞化反対声明文(PDF)
沖縄、琉球弧の軍事要塞化反対声明
2025年5月6日 第70回日本基督教団大阪教区総会で可決






