《寿炊き出しの会》
分断をのりこえる場として
8月以外毎週金曜日に寿公園で行っている寿炊き出しの会は、日雇い労働者の先達である「老人クラブ」の声がけで1993年12月から始まり現在第33次に入っている。バブル経済崩壊の不景気が労働者の町に直撃し、公的資料ではないものの当時の記録によると寿地区および周辺での行路病死は1993年には184人。今では「寿の人」と言えば簡易宿泊所に住んでいる人を連想する人が多いが、当時日雇い労働者にとって野宿生活は地続きの問題。まさに「命の灯」を守る活動としての炊き出し。時代の移り変わりとともに労働者の町から「福祉ニーズの高い町」になり行政による福祉拠点化が進みその様相は変わったが、第32次では平均で467食の雑炊が配食されており、炊き出しは食べるだけの場にあらず、身寄りなど人的関係性の乏しい困窮者が新たにつながりを構築する「場」の一助になっていると感じている。
また、昨年より学校や教会などの団体による炊き出し参加が増加傾向にあり、炊き出し後のふりかえり会での感想で交流を通じて「ホームレスの人がはじめて人だとわかった」(要約)と、学生から素直な感想があった。この〝出会い”はとても大事なことだ。
初めて無料の食事を必要としている人がこの日本にいることの実感と現状、そして自らがもっている偏見に気が付き「学びなおし」「出会いなおし」を果たす「場」となることを願っている。
「悲しんでいるようで、常に喜び、貧しいようで、多くの人を富ませ、無一物のようで、すべてのものを所有しています」(コリントの信徒への手紙二6章10節)生きにくい世、新たな苦難の中、このことを実践として目の当たりにしていけるか問われているように思う。
(汀なるみ報/寿地区センター主事)






