第4回部落解放全国活動者会議in会津は、6月9〜11日の三日間、会津若松市の若松栄町教会を会場に、約180名の出席を得て行われた。主題は「『原発』という差別〜フクシマの声に聴く」。
第1日目は、小西望東北教区総会議長による開会礼拝、東谷誠部落解放センター運営委員長の基調報告、片岡輝美会津放射能情報センター代表の記念講演、僧侶の立場から田中徳雲さんの証言、強制避難者の立場から古川好子さんの証言。
第2日目は、布田秀治さん(いずみ愛泉教会)によるガラテヤ3・26〜29の聖書研究、自主避難者の立場からAさんの証言、農業従事者の立場から「赤べこの母」さんの証言、柳原敏夫弁護士による「ふくしま集団疎開裁判」の報告、山崎知行医師による「子ども健康相談」の報告、全体会での分かち合い、夕食・交流会。
第3日目は、病床から駆けつけてくださった会津放射能情報センターメンバーの渡邉規雄さんによるフィールドワークのための事前学習に続き、4グループに分かれての会津の被差別地域等を歩くフィールドワーク(一グループは映画「SAYAMA〜見えない手錠をはずすまで」の鑑賞)、3日目の振り返りの時、樋口洋一さん(久米田教会)による閉会礼拝。長々とプログラムを羅列したのは、これだけの盛りだくさんな内容が今回の活動者会議の大きな特徴だからだ。
周知のとおり、2011年3月11日の東日本大震災とそれに伴う大津波によって、東京電力福島第一原子力発電所は大事故を引き起こした。以来3年余りの時間が経過したが、その渦中にあって様々な立場を背負いながら生きてきた人々の生の声をひたすら聴くことが、この会議を開催する意図の大半を占めている。その意図に沿って、とにかく聴きに聴いたという印象が強かった。そこで紡がれた多くの言葉は、いずれも重く、心を刺すものであった。
強制避難者は、住むべき場所さえ失った被害者であるはずなのに、多額の補償金を得ているとの中傷にさらされ、自主避難者は、逃げる必要もないのに勝手に避難していると責められ、自治体もその要請には応えようとしない。農業従事者は、作っても商品にならないのではないかという葛藤の中からようやく立ち上がり、一般の安全基準よりはるかに厳しい放射線量測定を行って、安全と判断したものだけを販路に乗せようとしても、購買者から「人殺し」という残酷な言葉を浴びせられる。
共通して語られたのは、そのような厳しい経験を強いられながら、少し立場が違うだけで、思いを共有することもかなわず、分断され、孤立させられていく現実であった。その分断は同じ地域にも、家族の中にももたらされ、放射能被害だけではない、大きな苦しみを生み出している。政府や自治体が、それぞれの思惑から正確な情報を出さないことも、こうした分断に拍車をかけている。
そんな違いを抱えた人々が、一堂に会し、思いを語った背景に、思いを共有することを困難にされた人々をつなぎ合わせていく会津放射能情報センターの大きな働きがあることを強く思わされた。このはたらきは、先行きの見えない状況にあって、希望であり、福音的なはたらきだと感じた。
今回の主題に「『原発』という差別」と謳われている。人を自分の責任ではなく負わされている状況によって、苦しめ、不利益を強いる構造を「差別」とするならば、フクシマの現実は、まさに「差別」にほかならない。そもそも東京電力の原発が福島に作られていること自体が差別である。片岡輝美代表が示されたように、国の原子炉立地の指針に「原子炉の周辺は非居住区域であること」「非居住区域の外側の地帯は低人口地帯であること」「原子炉敷地は人口密集地帯からある距離だけ離れていること」とある。原発推進政策は差別政策なのだ。その上、これだけの事態を引き起こしておきながら、再稼働だの原発の新規建設を目論むこの国の現状は何と言うべきだろうか。
部落解放全国活動者会議でこのことを主題として取り上げたのは、基調報告で東谷さんが『2013年度版全国のあいつぐ差別事件』を示して語ったように、部落差別は今もなお続いており、差別を訴えても、多数の差別する者、無関心な者によって黙殺され、差別が再生産されていく現実と、原発というもう一つの差別の現実とに通底するものを感じてほしいと願ったからだ。
3日目のフィールドワークでは、会津若松市内の被差別地域を歩いたのだが、案内者から、市内中心部から郊外に向かって流れている水路が、その地域を避けるようにして曲がっているのを示された。様々な差別は温存されているにもかかわらず、市当局は「かつてはあったが、現在は存在しない」との主張を繰り返し、「同和対策事業」もほとんど行われていないそうだ。「原発」という差別が起こっているこの町にも、極めてわかりにくくする形で部落差別は存在しているのだった。
今回、部落差別と「原発」という差別を直接結びつける議論はなされなかったが、参加者は多くの言葉に接する中で深い関わりを感じ取ったことだと思う。そして教会あるいはキリスト者が、この世の差別的状況とどのように切り結んで歩むのかとの問いを受け取ったのだと思う。
会津での経験を、ただ「いいプログラムだった」で終わらせることなく、語ってくださったすべての方々に思いを寄せながら、自分の置かれているところで、具体的に担うべきことを担っていきたいと願っている。
3日間のプログラムは非常に濃密で、十分に報告することはできなかったと思う。後日報告書が発行されるので、是非それを手に取ってお読みいただきたい。(柴田もゆる)
▼部落解放センター運営委員会報告▲
6月11日から12日にかけて、会場の若松栄町教会の向かいにある会津労働福祉会館2階会議室にて今総会期第4回部落解放センター運営委員会が開催された。出席者は28名。
病気療養中の運営委員(代理が出席)のために祈りが捧げられ、寄せ書きを行った。また長年、同宗連などセンターの働きを担い、この度退職する丹波二三夫職員に開会を担当してもらい、その働きを覚えて祈りを献げた。
全国活動者会議in会津の報告がなされ、感想を述べあった。180名の参加者に加えてゴスペルクワイヤのために50名が参加し、とても豊かな集会となった。
各報告、各教区報告など様々な取り組みについての報告、前年度経常・特別会計決算の報告、監査報告などがなされ、それぞれ承認された。会計ソフトの件、備品購入の際の決済の件なども話し合った。東海教区通信の記事、東海教区議長からの問い合わせ、機関誌『よき日のために』の記事への反応など、教団内の様々な事柄への対応が報告された。常任運営委員会の任期は次期第1回運営委員会が開催されるまでであることが確認された。改訂『宣教基礎理論』(第2次草案)については、次回常議員会に意見を出すこととなった。
EMSからの献金を用いての諸活動(W.E.企画)として、映画『SAYAMA』の上映、石川さんご夫妻の講演、青年ゼミ、解放劇上演、説教集出版、ドイツ研修など様々な活動が計画され、一部すでに実施中である。報告を受けると共に今後の予定などについても話しあった。
解放センターと有志とで行われる「沖縄キャラバン」の実行委員会を組織するために、今運営委員会に金井創牧師(佐敷)に陪席していただいた。実行委員会は教団を超えて有志で組織し、実施のために具体的な準備を進めることとした。
次回の委員会は2015年2月2日~3日に大阪で開催の予定。
(多田玲一報)