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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4938・39号】荒野の声

2020年11月28日

アルベール・カミュ『ペスト』(新潮文庫)を読んだ。ロックダウンした町の中での人々の生活を「抽象との戦い」として描いている点が印象に残った。▼主人公の医師リウーは、人々が製造ラインに乗せられた工業品のように準備を施されて連れて来られ、彼が診断をくだすと、すぐに連れて行かれるという単調な連続の中で、自分の心を無関心が満たして行くのを感じる。同情が無駄となり、心の扉が徐々に閉ざされて行く感じの中に慰めを見出し、それによって自分の仕事が容易になって行くことも知る。▼「抽象と戦うためには、多少抽象に似なければならない」。作中の心に留まったフレーズを思いめぐらしながら、コロナ禍の中での自身の歩みを振り返ってみた。病院や施設へお見舞いに行けない辛さを感じつつ、一方で、病や老いの苦しみと向き合う具体的な個人に思いを寄せながら、「どのような言葉をかけたら良いだろう」と悩む時間が減った。様々な会議が書面やオンラインになり、休憩時間にお茶を飲みながら談笑する時間が無くなったことに淋しさを覚えつつ、一方で、少なからず気を使う人と顔を合せる必要が無くなり、集まるためのコストもかけずに済むようになった。▼「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた」。抽象と戦いつつ、降誕の恵みをどう証しするかが問われているような気がした。

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